9月

●結構久々なオススメでっす。というか今月はこの劇団があるから、あわててオスス
メを書いた次第です。そう、少年王者舘! 維新派(9月に東京のみの公演あり。も
ち見に行くぜ)と並んで私の中では別格な劇団ですが、今回はワタクシが天野天街の
世界と初めて出会った記念すべき一作『それいゆ』の再演です。広島・長崎の原爆と
戦後風俗史を鮮やかに絡めて「来るべき戦後を送れなかった生命体の夢」をシュール
に描き出した文句なしの傑作。現在発売中の「エルマガジン」でプレビューを書かせ
ていただいてますので、よろしければそちらもご覧下さい。虎の拍子が目印よん♪


●若手では「ベトナムからの笑い声」の番外公演「ペルーとチリからの笑い声」が注
目。ヨーロッパ企画と並んで京都…いや関西でもトップクラスのセンスを持つコメ
ディ劇団のはずですが、京都で年1〜2回程度しか公演を打たない超マイペースぶり
ゆえ、演劇ファンの間ですら名前が十分浸透していないように思える彼ら。が、ライ
トさとブラックさがエエ具合に融合したコメディは、他ではなかなか見られないもの
でしょう。松本人志の笑いが好きな人には特に必見。


●同じ京都の劇団では、ユリイカ百貨店も私的には必見ですね。以前から「いいよい
いよ」という噂は聞いているのですが、「具体的にどの辺りがいいのか」という説明
がちゃんとできる人と未だに出会えてないので、一体どんな風に「いい」のかが相当
気になっています。維新派チックな本公演チラシも素敵っすね。前回公演は病気のた
めにあえなく観劇断念したので、今回こそ…! 


●あと山海塾は今回こそ眠らないように、体調を整えてから挑みたいと思っている
よっしーでした。チャオ。

7月

●どもですー、半年ぶりぐらいですか? かなりサボってしまいましたね。本当にゴ
メンなさい。今月は久々に書きますですよー。
●さて今月の個人的オススメは、割と後半に固まってますね。筆頭は転球劇場の『ド
ラゴン』。高層ビルの窓ふきをする3人の男たちの他愛ない会話を、実際に天井高く
からつり下げたゴンドラの中だけでやっちゃった、伝説の舞台の再演です。ワタクシ
は幸い初演を見た者ですが、このぶっ飛んだシチュエーションだけでも本当に衝撃的
な舞台でした(特にオープニングは強烈なので遅刻厳禁!)。最近ハイテンション気
味になってる転球劇場が、久々に当時のスローモーペースに戻るっていうのも、見逃
せないポイントっす。
●Piper・川下大洋の個人ユニット「ゴーゴーハリケーン」は、最近の川下さんの一
番のお気に入り劇団・スクエアの上田一軒を演出に招へい。前作に引き続き、川下氏
の理数系知識をフルに詰め込んだ(と思われる)脚本を、上田君がどうやって理屈臭
くなく見せていくのかは大注目でしょう。すでに前売は完売…と思われましたが、7
/5に追加公演の前売が開始されますので、どうぞ諦めずチャレンジしてみて下さい。
●元維新派のいがらしだいすけが率いる野外劇ユニット「level blue」も、久々に新
作を発表。旗揚げ公演の『deep blue』では、東欧神話の世界を思わせる独特の幻想
空間を立ち上げ、維新派とはまた違うロマンチシズムを感じさせる世界を見せていま
した。今回はアイルランド神話の世界を参考にした霧の森が舞台だそうですので、神
話や妖精話とかが好きな人にはたまらない野外劇になるのではないでしょうか?
●あと7/4の『裏カモロック』は、ヨーロッパ企画によるイベントです。メトロで行
われる音楽イベント「カモガワ・ロック・フェスティバル」の一環として行われるも
のだそうです。彼らの撮った映像や裏話などが聞けるそうなので、ヨロキカファンは
行くべしでしょう。ドリンク代のみの無料だしね。
●さて来月からもサボらずに書けるでしょうかと、ちょっと不安のよっしーでした。
アディオス!

2月

●1月は行く、2月は逃げる、3月は去る…などと世間では言われますが、まあ実際2月
は芝居少ないですねー。ちなみに2/15・16は松尾スズキ作・演出&中村勘九郎主演の
『ニンゲン御破算』などを見に東京まで行くので、関西での観劇予定を入れてませ
ん。アイホールで行われるグラインダーマン初大阪公演、マジ見たかったんだけど
なー(泣)。テクノ色の強い現代アート系パフォーマンスは、意味なんかわかんなくて
も見るだけで楽しいから、ダンス系統の舞台が苦手な方でも一見の価値あると思います。


●さて今月も必見なのは、扇町ミュージアムスクエアのクロージングイベントシリー
ズ。今月は「OMS戯曲賞」関連の舞台作品2本が要チェックです。『ドラマリーディン
グ』はこれまでの大賞作品計9本を、太陽族の岩崎正裕&MONOの土田英生がそれぞれ
演出する企画。普通に読んでしまえば膨大な時間になる戯曲群を、2人の演出家がど
のようにして2時間程度に納めるのか、その工夫のしどころが注目されます。そして
本公演の1週間後に登場するPM/飛ぶ教室は、主宰・蟷螂襲のOMS戯曲賞大賞受賞作品
の再演。リーディングと両方見て、その違いを確かめてみるのも一興かと存じます。
そして7年振りにOMSに帰ってくる劇団☆新感線は、こらもう絶対の絶対に見逃せない
物だとは思うのですが…予想通りチケットは完売で当日券も出ないんじゃないかとの
噂。なので強くオススメはし難いです。キャラメルボックスみたいにクローズド・
サーキットとかしないのかなー?


●若手劇団では、前回公演が極端な賛否両論だったデス電所と、OMS最終公演を見事
な手腕で成功させた劇団Ugly ducklingの「クラシック・ルネサンス」参加作品が気
になる所。ライト感覚の芝居が多い現在の若手には珍しく、人間の暗部を徹底的に描
こうとしているように見えるこの2劇団ですが、その表現方法は実に両極。デス電は
映像や音楽を大胆に用いて人間のダークサイドをフフンと笑い飛ばし、Uglyは詩的な
言葉でもって闇で生きる者の痛みをストレートにむき出してくる。さらにデス電はコ
メディに徹したミュージカル調の舞台、Uglyは初めて樋口美友喜以外の戯曲上演と、
どちらも挑戦的な舞台に挑むというのがまた奇遇なこと。文学的な方面から今後の関
西演劇を背負って立つ事は間違いなしの2劇団だけに、これは見ておくべきでしょう。


●大きめの舞台では、NYLON100℃のKERAの旧作『スラップスティックス』の再演が一
番オススメできそう。なぜか関西では評価が低いKERAですが、サイレント・コメディ
への愛情をストレートに描き出した本作は、KERAの中でもかなり取っつきやすい1本
ではないかと。オダギリジョーが主演というので騒がれてますが、私的には「デブ
君」の名で親しまれた伝説の名コメディアン、ロスコー・アーバックルを古田新太が
演じるってのが何かと楽しみです。しかし古田さん、初日2日前には「オロチロック
ショー」出てるのに…タフでんなー。


●というわけでワタクシも、タフに京阪神+東京と今月も頑張って飛び回って参りま
す。アデュー。

1月

◆どもですごぶさたです3ヶ月振りです。2002年の後半は妙に忙しくて、このオスス
メもしばらく留守しちゃってました。何でそんなに忙しかったかというか、忙しさの
ピークを過ぎた今となっては、自分でもよくわかりません。何じゃそりゃと思うかも
知れないけど、忙しいってのはそういうもんなんだと思います。と言い訳めいた前説は終了。
◆さて2003年1月はというと、いよいよ完全閉館まであと3ヶ月となった、扇町ミュー
ジアムスクエアのクロージングイベントシリーズについて語らずにはいられません。
今月は東京の劇団猫のホテルと、OMS戯曲賞2年連続大賞受賞を成し遂げた樋口美友喜
が所属する劇団Ugly ducklingが登場します。偶然両方とも、女性が作・演出を担当
(アグリーは作家・演出家が別れてるけど)している劇団ですが、猫ホテの千葉雅子
は人間の哀しみを馬鹿馬鹿しい笑いの中に描き、アグリーの樋口は人間の闇をスケー
ルの大きな幻想世界で表現する。この対極な女性作家の作品がクロージングのトップ
を飾るのは、女性上位時代の到来を予感させるようで、なかなか興味深いです。あと
1月21日のイベント『TIP COLLECTION』では、元ハイレグジーザスのメンバー3人のユ
ニット「EHHE」が登場。男子中学生レベルのリビドー爆発って感じのコントは、
『オースティン・パワーズ』などのおバカ映画好きに超オススメっす。
◆「関西期待の若手劇団は?」という問いに答えるとしたら、並んで上位に食い込む
のはまず間違いなしな2劇団、売込隊ビームとヨーロッパ企画の合同公演も注目で
しょう。どちらもコメディを中心にしている劇団ですが、役者の肉体による所が大き
いビームと、脚本の構成のすごさで勝負のヨーロッパと、こちらも上記のOMS女性劇
団に負けず対極的な組み合わせ。今回の合同ではあえて絡みは最小限にし、お互いの
特徴を生かした半分オムニバスな構成にするというので、一公演で2つの劇団の醍醐
味が味わえるお得な舞台となりそうです。
◆ さてオムニバスといえば、京都の若手演出家たちが松田正隆『蝶のやうな私の郷
愁』と、坂本チラノ『パ・ド・ドゥ』という2つの名作二人芝居に挑んでいくNew
Produce Projectも見逃せません。役者も若手ぞろいなので、期待の若手を一挙に発
掘できるいい機会になるのではないでしょうか? 個人的にはMONO尾形宣久と劇団太
陽族の金田典子が出演する『蝶のやうな…』がものごっつい見たいですー!
◆そして花組芝居の『百鬼夜行抄』は、同名少女オカルト漫画の舞台化。原作は
ちょっぴりマイナーな作品ですが、ワタクシも含めて熱心な読者の多い隠れ名作で
す。泉鏡花的なおどろおどろしい妖怪奇譚を、サザエさん張りの日常感漂う空気の中
に描き出すあの世界をどうやって再現するのかは、正直楽しみっつーより不安の方が
大きいのですが…。取りあえず原作者である今市子描き下ろしの公演チラシは、確実
に昨年のチラシトップ5に入るぐらいの逸品です。探してみてね。
◆OMS閉館に見られるように結構厳しい関西演劇界ですが、逆にその苦しい状況をバ
ネにした傑作がいっぱい見られる2003年になればいいなと切に願うよっしーでした。
ではまたいつか。