9月

◆ちょっと昔の話になりますが、最近うちのPCを買い換えて、ついでに最新の「一太
郎」を入れました。この「一太郎」には関西弁対応モードがついていて、書き言葉ま
で関西弁を使うことが多い私としては大変重宝しています。上記の「知らん」かって
一発変換してくれるし、関西人の強い味方ですわ、ビバ一太郎!(注:ワタクシ
JUSTSYSTEMの回しもんではござんせん、念のため)


◆さて9月のオススメですが、個人的には何と言っても少年王者舘! つげ義春原作
の映画『必殺するめ固め』の監督でついにメジャーに進出? と期待される天野天街
の世界、もしかしたら今の内に見ておいた方がいいかもです。ちなみに扇町ミュージ
アムスクエアのフリーペーパー「OMS club」の今月号に、私とOMSスタッフの松井さ
んによる少年王者舘談義が掲載されてますので、そちらも合わせてどうぞ。また昨年
ごく一部で好評を得た「オウジャカン★キーワード」のページも復活しています。
http://www.oms.gr.jp/oujyakan/index.html


◆「今の内に見ておいた方がいい」度では負けていないのがヨーロッパ企画。『シッ
クス・センス』のM.ナイト・シャラマン張りに複線を張り巡らせた精巧なストー
リー、今のメール文化を象徴するような実のない会話の数々、そして「超客観的」と
でも呼びたくなるような無責任感あふれる役者たちのたたずまい…rise-1演劇祭の参
加も決定するなど、その動きからはますます目が離せませんね。やはりrise-1演劇祭
に参加する売込隊ビームも、そろそろ「今後に期待の若手」から飛躍できるような傑
作を出してきてもいい時期。今回でその一つの結果が出てくるんじゃないかと、ワタ
クシは勝手に考えてますがいかがでしょう。


◆パフォーマンス系ではdumb type久々の新作が一番の注目どころでしょうが、東京
公演の評判が恐ろしくなるぐらい悪いのがなあ…。関西に来るまでに良くなっている
ことを祈願しましょう。関西初登場となる東京のパフォーマンスユニット「水と油」
は、摩訶不思議なマイムを見せる集団だそうで、私の知り合いの間ではオススメする
声が非常に高い。ただ会場が狭いので、早めにチケットをゲットした方がいいでしょうね。

8月

★うーむ、今月は好公演が多いよなあ…「絶対見に行く」と言えるものだけでも16本
かあ…タダでさえ最暑な月なのに、お金以前に体が持つのかしらどうかと、ちょっと
弱気で攻めてみましたよっしーです。皆さん、夏バテしてませんか〜?
★てなわけで今月上げた作品はどれも間違いなくお薦めなものなんですが(って毎月
言ってるような気がするな)、いわゆるダンス系というか、あまりセリフに頼らない
舞台が多いですよね。イスラエルのダンスカンパニー・バットシェバ舞踊団の若手公
演とか、脱力小ネタギャグの数々をたった一人で繰り広げる吹越満のソロライブと
か、もはや彼らを“ダンス”の枠だけで語るヤツはいないだろうなコンドルズとか、
あのマルセル・マルソーに師事したいいむろなおきのマイムとか。これらの舞台の共
通するのは、パフォーマーの一連の動きの中に隠された“言葉”の残片を勝手に想像
し、その世界を自分なりに創造するという楽しみ…と、たまには小難しいこと言って
みましたが。まあ以上の公演は「ダンスは苦手」と言う人でもかなり楽しめる方の部
類だと思いますので、パフォーマンス系観劇デビューの記念作にするのも結構な事で
はないでしょうか。
★この中では聞き慣れない集団名「jelly fish」は、元MOTHERの牧野エミがプロ
デュースするユニット。今回は後藤ひろひとや土田英生など、関西有数の作家陣を多
数そろえたコントオムニバス…とは、なにやら伝説のコントユニット「売名行為」を
彷彿とさせる内容ですわね。個人的には牧野さんの夫君でもある、転球劇場の福田転
球久々の書き下ろしコントの内容が気になる所。かわら長介のプロデュースでも公演
した、漫才コンビ・シャンプーハットの活躍も、実は密かに彼らのファンである私と
してはワクワクもんです。そしてコントオムニバスと言えば忘れちゃいけないのがス
クエアの月組公演。個人的には彼らって長編より短編の方が断然面白いと思ってるの
で、こいつは外せませんぜ。
★では今日も暑い(最高気温37℃)のでこの辺で。チャオ。

7月

■ここを見に来ている皆さんなら既にご存じでしょうが、扇町ミュージアムスクエア
に続いて近鉄劇場・小劇場閉館が決定…と言って泣いててもどうしようもないよね。
少なくとも私らは、観劇人口減少傾向に歯止めを立てるべく、お金と時間の続く限り
ガンガン芝居観ましょーぜ。で、これはという公演にはお友達を誘っていきましょ
う。非常にささやかな運動ではありますが、まあ気分の問題でございます、気分の。

■で、今回オススメ筆頭なのはもちろん維新派、と言いたい所ですが。なんせ場所が
岡山県で、しかも瀬戸内海にポツネンと浮かぶ小さな島(でも一応岡山市内なんだ
ぞ)だっつーのだから「何があっても見に行け!」とは強く言いがたい…。私ゃ常々
「維新派を観たことないヤツに関西演劇を語る資格は無い!」と言い放っていたので
すが、肝心のご本人らが関西で公演をやらないとなると、そうは言いにくくなります
わな(苦笑)。んでも長年“廃墟”にこだわってきた彼らが、今回本物の廃坑を舞台に
芝居をするというのだから、多少の金と時間を叩いてでも観る価値はアリアリなは
ず。ちなみにこの時期犬島では「犬島アーツフェスティバル」と銘打って様々なパ
フォーマンスを上演することになってますし、島自体も海水浴場などがあってなかな
か楽しめる所らしいので、はなから小旅行のつもりで出かけてみてはいかがでしょ
か。しかしこの夏は維新派だけでなく天野天街脚色・演出の『真夜中のヤジさんキタ
さん』に珍しいキノコ舞踊団に『アテルイ』にKERAが仕切る空飛ぶ雲の上ナントカ一
座(←いつまで経っても正式名称覚えきれず)にと、既に遠出の観劇予定が目白押し
なワタクシ。大丈夫か、色々な意味で。

■で、オススメを関西に戻してみますと、特にコメディ系で興味そそられるのが多い
です。哲学とギャグがドッキングした1人パントマイムを見せる上海太郎、劇団お得
意のコントオムニバスで勝負するベトナムからの笑い声、ストリートパフォーマンス
とジャングルジムをいかに笑いとつなげるのかが気になる転球劇場…。しかし何と
言っても必見は、いよいよ後藤ひろひとの積年の望みだった「音楽劇」にチャレンジ
するPiper! 後藤大王はもちろん川下大洋&山内圭哉も、ミュージシャンとしても
相当な腕前の持ち主ってのは、数々の客演で証明されているところ。音楽も演劇も同
等のパワーを持ったスゴイ舞台が期待できそうです。あ、それとよしもとrise-1シア
タープロデュースのシリーズ『博士の異常な研究』も、今月は石原正一ショーにスク
エアにヨーロッパ企画と、今期待のコメディ集団3傑がそろっててオススメざんす。
■今月こんな所ってなことで、夏ばてには気を付けましょーね。>all

6月

●先日日曜日だというのに芝居も見ずにアウトドアのフリーマーケットに行ってた
ら、1日中炎天下の下にいたために、妙な形の日焼けが出来て困っちゃってるよっ
しーです。これは芝居の神様の罰が当たったんでしょうか。やっぱりインドア人間は
それらしくしておくことにいたしましょう。でも楽しいけどね、フリマ。

●さて今月は南河内万歳一座復活公演とか、鴻上の安部公房戯曲初挑戦とか(しかし
東京公演の評判、あまり芳しくはないみたい…)、地球ゴージャスのフェスティバル
ホール初進出作とか、劇団☆新感線の「スサノオ」シリーズ1作久々の再演とかの注
目公演が目白押しですが、やはり最大のトピックはクドカンこと宮藤官九郎が初めて
本公演作・演出を務める大人計画。新鋭脚本家として一躍メジャーな存在となった彼
ですが、クドカン作品が大阪の舞台に乗るのは意外やこれが初めて。数々の映画で怪
演を見せている松尾スズキが、メイン役者として大活躍ってのも嬉しいやね。ちなみ
に松本大洋原作・クドカン脚本の『ピンポン』、試写で見ましたがコレ大傑作です。
見るべし! いつものおトボケムードとは一転した、ナイロンの大倉孝二君の演技が
抜群にイイっすよ。

●毎週月曜日に行われる『週刊シャトナー研。』も、試みとしてはかなり面白い。ど
んなに芝居の予定を詰め込んだってポッカリ空きがちな月曜日に、隙間家具(って言
い方したら悪く聞こえそうだけど)の如くに公演を入れるとは、さすがの目の付け所
です。私の必見は、ヨーロッパ企画メンバーが大量に出演する3週目のSF集と、保村
大和が東京から駆けつける4週目の『ハムレット』です。

●そしてホームページのアップに間に合うかどうかわかんないけど、京都では密かに
噂となっている集団「やみいち行動」が、実は今一番気になってる。何でも夜中にな
らないと公演を打たないとの噂で、今回も3ステ中2ステは24:00開演…。当方大阪
在住なので、さすがにこんな時間に京都まで芝居など見に行くのはアレなんですが、
幸い今回は日曜19:00公演という常識的な(?)時間があるので、それ見てきます。
しかし深夜特有のテンションで観た方がいい芝居なのかもなー、とも思うし…。京都
在住、深夜の足がある方、その他諸々な「夜の京都がナンボのもんじゃい」てなお
方、チャレンジしてみて下さい。

●自宅に乾燥機付き洗濯機が入ったおかげで、これからの湿っぽい季節は怖くないわ
よ! と、結びの言葉に迷ったあげくに無意味な季節柄自慢をしてみたよっしーでした。チャオ。

5月

●すっかり気候は春です。時に冬に戻ったり一足飛びに夏になったりしてますが、春
です。一年で一番おでかけしたくなる季節。さあ皆さん遠出をしましょう…というわ
けで、今月の大注目は『第三回アトリエ劇研演劇祭』。普段は京都在住者すらからも
「遠い!」と敬遠されてしまってるこの劇場ですが、この演劇祭だけは片道二時間
(注:私ん家からの場合)という道のりも乗り越えて見に行かねばならないと思える
ほど、おもろい演目がならんでおります。今年のテーマは「ダンス」ということで、
ダンス作品はもちろん、ダンスを用いる演劇や演劇とダンスのコラボなどが中心。私
的な一押しは、毎回オープニングで登場人物全員がダンスをするからという理由で選
ばれた(邪推)おバカ芝居の石原正一ショー。そして京都で暗躍する若手身体表現者
たちが一同に介する『センバツ!』ですわね。
●もう一つ面白い企画といえば、ヨーロッパ企画と音楽バンド・シュガーフィールズ
の合同ライブ。コントと演奏を独立した形で見せながら、両者が徐々に歩み寄ってい
く…てな形の独創的なライブになるそうです。シュガーフィールズはよく知らないの
ですが、なんでもヨーロッパ企画と似たようなのほほ〜んとした空気が流れるユニッ
トだそうで。ごめん無知過ぎで。ちなみに京都でも二カ所で公演あり。詳細はヨー
ロッパ企画のホームページで(http://www.donet.gr.jp/~europe/)。
●後の注目はこれが最後になっちゃうOMSプロデュース。それがなくても、生田萬演
出作品が関西でかかること自体が珍しいのでどのみち注目ですね。そしてPiperの川
下大洋率いるユニット「ゴーゴーハリケーン」は、演劇では珍しい含蓄あふれるSF芝
居を展開するそう。立身出世劇場の花・原尚子はじめ(彼女は上記の今仲ひろしの一
人芝居イベントにもゲスト参加!)スクエアの奈須&北村コンビに転球劇場の高木稟
と、強力なコメディアン(ヌ)たちの絡みは必見でしょう。そして個人的に何があっ
ても見たいのが、今年も梅ちゃんこと梅垣義明の新作ライブ! 今回はどんな過激な
客いじりを見せてくれるのか、んもぅワクワクハラハラざんすー。くれぐれも新品の
洋服なんか着てっちゃダメよ!
●今年こそGWに劇場以外の場所に出かけたいよっしーでした。あばよ!

4月

◆今月はなんちゅうか、個人的にLOVE! あるいはリスペクト! てな劇団&作家の作品
が多くて嬉しいやね。転球劇場に天野天街演出の流山児★事務所に維新派、そして唐
組のことなんですが。特に映像モニターを駆使したサスペンスフルなコメディに挑む
転球、久々に小空間での公演を敢行する維新派は、もう死なない限り絶対見るってな
モンです。


◆流山児★事務所は東京公演の評判も上々(なんせ天野演出にしては稽古期間が長
かったそうだし)なので、こちらも楽しみ。木曜昼公演後には主要関係者たちによる
トークもあり。毎回天然っつーの通り越した何とも言いがたい爆弾発言をかましてく
れる、天野天街のトークは舞台以上に必見かもね(笑)。


◆後藤ひろひと作品の中でもかなり人気の高い『ダブリンの鐘つきカビ人間』は、
『人間風車』の時みたくラストをウェルメイド風にねじ曲げさえしなければ、傑作に
なるのは間違いなしの舞台です。初演では先日遊気舎を退団した山本忠が演じていた
カビ人間を、そろそろ映像分野でもブレイクしそうな若手怪優・大倉孝二が演じるっ
つーのも見所の1つでしょう。


◆ダンスでオススメしやすいのは、ベジャールとENTEN。『バレエ・フォー・ライ
フ』はロックバンド・クイーンの音楽を大胆に用いて大絶賛された名作ですので、私
のようなロックマニアには特に見逃せない演目です。ENTENはメッセージ性と演劇的
な要素が強い異色の新作を上演。「おもちゃ箱をひっくり返した」という形容をよく
使われる集団ですが、どうやら今回はその固定概念を捨ててかかった方がよさげな感じです。


◆今年は桜が早すぎてやっぱりお花見には行けそうもないよっしーでした。アスタ・マニャーナ。

3月

■さて今月もかなり多いからじっくりオススメ書きたい所ですが、2月が28日しかな
いもんで相当仕事が大変なことになってるアタクシ。というわけでかいつまんで。


■特に文句無しのオススメは、近鉄小劇場で行われる3本(大和さん一人芝居、
MONO、阿佐ヶ谷スパイダース)と『天保十二年…』。特に『天保』は28年振りの上演
ということと、超豪華キャストにいのうえひでのり演出ということを考えればたとえ
立ち見でも見ておきたいところ。


■対する関西若手劇団たち−烏丸ストロークロック、デス電所、ヨーロッパ企画、
dots、売込隊ビームも見逃せない。映像etc.を使ったアーティスティックな空間を作
る烏丸とdots、エンタテインメントと狂気の入り混じる独特の世界を模索中てな感じ
のデス電と売込隊、ひたすら王道喜劇の道を行くヨーロッパと、それぞれの持ち味の
違いを楽しみたいものです。


■ダンス系では、関西では久々に公演を行う山下残。今回は観客に一冊の本を配り、
その本と照らし合わせながら見る舞台を作り上げるとのことで、なかなかお気楽に楽
しめそうな作品です。そして関西のダンスの殿堂トリイホールでは、『第1回TORII
AWARD最終公開選考会』と、トリイホールのダンスシリーズ「DANCE BOX」のスペシャ
ル企画が! 実はこれがDANCE BOXの最終回となるそうなので、これはもう必見です。

■というわけで今から仕事に戻るよっしーでした。あでゅー。

2月

▲もう有名無名まぜこぜに注目作だらけな今月のお芝居。以上に上げた作品は全て間
違いなくオススメなんですが、なんか他の人がオススメ端折りそうな作品からピック
アップしましょか。


▲んでは「キタ芝」では扱いの薄そうなダンス関連から。演劇コラムニストの中西
リーさんいわく「今最もかっこいいダンスを見せてくれる」北村明子率いるレニ・
バッソの、関西ではこれが初となる本公演。昨今ダンスに映像や凝った照明が絡むの
など割と普通ではありますが、彼らは中でもかなりコラボレート性が強いパフォーマ
ンスなのだそうです。今回はカンパニーの新作と、主宰北村明子のソロ(11月にアー
トコンプレックス1928でやった作品)の2本立て。またほとんど無名の新人ながら
「バニョレ国際振付賞」出場という快挙を遂げた期待の新人、発条ト(ばねと)。普
段はそれこそ映像と肉体のコラボと言えるステージをやっておるのですが、今回は肉
体に重きを置いた作品にチャレンジするとか。以上2作ともダンス初心者でも安心な
作品と思われますが、特にレニ・バッソはストリートダンス嗜好の方にもオススメで
す…って、中西さんの受け売りだけどもさ。


▲コメディ系では、今年は一層の飛躍間違いなしなスクエアと、「石原正一ショー」
の石原正一を作・演出に招いた遊気舎は当然どちらも必見。ですがここはあえて「ベ
トナムからの笑い声」に言及させていただきましょか。旧作の『ドッグ・オア・
ジャック』が、昨年の遊気舎プロデュースの1本に選ばれたことで、一躍注目度を高
めた彼ら。テーマ性や芸術性など一切考えさせないスラップスティックなコメディだ
けど、その「笑い」のセンスと志の高さは相当なもの。ほとんど京都でしか公演を行
わない集団だけに、今回の大阪公演は貴重でしょう。


▲コメディと言えば、今回の芝居屋坂道ストアの作品もバリバリのコメディだそうで
す。心の痛みや自分を取り巻くモノどもへの疑問と不安を、素直かつ繊細な言葉で提
示する普段の彼女らとは違う姿(あるいは本性?)が垣間見られるかもしれません。
▲えーと、後1本ぐらい。丁寧な演出力と役者の演技力で将来に期待できる水の会
も、今の内にチェックしておいた方がいいかもです。前回は脚本が劇世界を心底まで
描き切れてないという不満が残ったのですが、自分たちの作品や演劇に対する真摯さ
は、最近の新人劇団の中でも群を抜いているように思われました。これからどんどん
成長していくのではないでしょうか。


▲というわけで、あとは風邪引いて観劇の予定が大幅に狂わないことを祈るだけの
よっしーでした。チャオ。

1月

■正月の挨拶をする前に一言謝っておかねばならないのが、「先月オススメ休んで申
し訳ありませんでした!」ってことですわね。仕事の洪水+体調不良(つーてもタダ
の風邪なんだが)で、勝手にお休みいただいておりました。すんませんすんません。
その分今月気合い入れてオススメさせていただきまっ!
■まず最初は無難に王立劇場第3回公演から。前回までの吉本興業色が強かったキャ
スティングとは趣向を変え、三上市朗、腹筋善之介etc.の小劇場名物メンバーを中心
に“寄席”に挑むとか。西洋的な(特にモンティ・パイソン系)コメディに強い影響
を受けた大王が、純日本産の演芸である落語をどう料理するかは楽しみなところ。全
3回公演はあっつーまに完売したそうですが、何でも追加公演が決定したらしいので
興味ある方はそちらを狙ってみましょう。
■深津篤史が桃園会で発表した『カラカラ』2バージョンを一挙に上演するKAVCの企
画も、負けないぐらい注目。同窓会に集まった人々を通して「あの震災」が与えた心
象風景を詩的に描いたという事だけでも見事な秀作。しかし本作の肝は、この2つの
話が実は同時間軸状で平行して進行する話だということですね。つまり『吉永の場
合』で「ちょっと向こうを見てくるね」と言って退場した人は、『遠山の場合』で
「さっきまであっちにいたの」と言って登場する…という具合。そういう意味では、
できれば2作両方とも見るべきな舞台でしょう。ちなみに出演はオーディションで選
ばれた若手役者たちです。
■そして今月ある意味一番注目なのが『ブルールーム』。『エリザベート』でのトー
ト閣下役で多くの子女のハートを打ち抜いた内野聖陽&大人計画公演の色気たっぷり
な客演で大きく名をあげた秋山菜津子という、日本を代表するエロ役者(いや誉め言
葉で)2人の共演ですからねー。セックスを大胆に扱った本作には絶好の2人で
しょ。ただ会場がシアター・ドラマシティと、東京版とは2倍近い規模での劇場の公
演だけに、エロオーラが東京初演のそれより薄まらないかどうかだけが心配なのでご
ざいますが…。
■後気になるところをチョコチョコと。本職が教師である主宰・長谷川孝治が、その
立場を存分に生かして(推測)作った名作を再演するのは弘前劇場。桃園会の江口恵
美がゲストというのもまた楽しみ。魚船プロデュースは、OMS戯曲賞の最終候補に残
り、賞は逃したものの選評ではなかなか好意的な評を集めたという山口茜の描く世界
に注目したいです。人間の暗部の描写には定評のあるくじら企画の大竹野正典が、日
本近代劇の名作戯曲に挑む舞台もやはり期待が大きい……が、以上3作品上演期間が
思いっ切りかぶってるってば(笑)。観劇ハシゴのスケジュールに苦労しそうだ。
■というわけで今年もよろしくなよっしーでした。ダー・スビダーニャ!