BASILさんの下半期ベストアクト
こうしてみてみると、芝居においては、物語性よりもそうではない部分に特に魅力を感じ
るようです。本や映画だとまた違うのでしょうが。・・・やはりメディアの特性による違
いなのでしょうか。エンターテイメント系が少ないのですが、TAKE IT EASY! の「刻〜カ
ドゥ〜」や満遊戯賊の「シレンとイル」なぞを観ていたら、また評価も違ったかもしれません。
悪いけど、同じ下半期に観た四季の「ライオンキング」を上回る迫力でした。 歌舞伎と
ケチャと民謡とオペレッタが組み合わさったかのような、ジャパネスクなショー。独特の
世界観。水を使った物凄いセット。こればかりは絶対に生で観ないければ意味がない、と
感じました。深夜に制作ドキュメンタリィ番組をみたのですが、きれいに撮られていたに
も関わらず、どのシーンもまるで死んでいましたから。・・・芝居という「生もの」の威
力をみせつけてくれた逸品でした。
因に私の1999年のコメディBEST1です。タコ部屋に暮らす五人の板前見習達とそこの店の
高校生の娘が繰り広げる莫迦莫迦しいやりとり。演技も凄ければ、キャラクターの作り込
み方も、在りそうで見たことのない類。登場人物は皆、デフォルメを効かせたどうしよう
もない自己中心者ばかりなのに、何故か他人事では片づけられないリアルな痛みを自分の
内に感じてしまって。一歩間違えば年寄り向けの吉本新喜劇になり兼ねないセットで、比
較にならない濃い世界を作り出した手腕は見事です。
再演。青年団の代表作、だそう。日韓併合の前年のソウルに暮らす、女中やら食客やらを
交えた日本人一家の風景。まるで芝居に見えない淡々としたリアルさ。かといって「静か
な演劇」にありがちな、「予定『不』調和」の為の、客の目を眩ます作為的なアザトサも
ない。勿論、先が読めてしまって退屈になるという訳でもなく、観ることによってのみ人
間関係や事情などが次第に分かっていく作りになっていて。やはり客目には分からないよ
うに、裏で緻密に計算されているのでしょう。
4位 |
「アイスクリームマン」 KUTO-10プロデュース |
信州の山中の自動車教習所を舞台にした、雑多な人間関係。連発されるコトの次第は皆尻
切れトンボで、エピソード未満、状態の羅列、といった感じなのですが、ほら、こんな人
って日常でも居るでしょ、こんな風に言い過ぎちゃったり、上手く言えなかったり、こう
いう風にしか出来なかったり、妙なことになっちゃったりする人、よく居るでしょ、とい
う感じがよく出ていました。溜まらなくウザいんだけど、凄く上手く捉えてあって、繰り
返し観たくはないけど、とても良かった、・・・そういう作品でした。
此処とかMONOの“聞き返し”の手法自体は、どうも不自然で好きではないのですが、それ
はさておき。教会の一室で、二つの時代が交互に演じられていく物語でした。登場人物は
全然違うのですが、後の時代の登場人物は前の時代の登場人物の生まれ変わりであること
が、次第に客にだけ分かってきます。皆が時代を超えて前世と同じ様な問題に逡巡する様
を眺めるなんて、観客側はちょっと神様みたいだ、と思いました。
実は私、役者ってあまりちゃんと観てなくて、あまり容姿も覚えていないのです。上手い
順とか何とかいうよりもむしろ、脳裏に残っている順。だから観た芝居の古い新しいも大
いに関係しています。
「よろしくキャノンボール(石原正一ショー)」を観ていたら、ただ一人ズバ抜けて<B>
よく分かる</B>人が居て、その人がこの人だったのでした。雰囲気も容姿も声も良くて、
何しろ兎に角見分けがつき易い(笑)。男前だなぁ、充分芸能人を張れそうだなぁ、と思
って観ていました。
彼女もよく分かる人です(笑)。覆面していても他を抜きんでる、そのよく通る声。甘酸
っぱいグレープフルーツのよう、と評されるさわやかな笑顔。ビキニがイヤン♪なキュー
トなバディ。彼女の起用で衛星に追い風が吹いた、というくらいですから、私以外にも魅
力を感じている人は多いのでしょう。
お父さん的包容力が滲み出ていて、好き。最后まで見捨てないで助け出してくれそう。顔
はやっぱりというか何というか忘れちゃいましたけど(笑)、舞台でみたら必ず思い出す
と思います。
演技はよく覚えてないのだけれど、容姿と、「オレンジ・ブルース」で演じた牧師役その
他のキャラクターがマッチしていて好きでした。繊細そうで、真面目で、達観していて。
・・・逆にあの人が、頭のいい小狡い男を演じる処って、ちょっと観たくない感じ。
甘ったれの少年を演じさせたら、この人の右に出る者は無し! いつか、これまたしっか
り者の少年が上手い小椋あずき(そとばこまち)と、二人並んで少年役を演じている姿を
観てみたい、とかなり真剣に願っています。
次点 |
淀川フーヨーハイ(満員劇場御礼座)、池田幸巨(スクエア) |
筆者紹介
BASIL:「ビキニがイヤン♪なキュートなバディ」、とかオヤジなことをさらりと書くの
で時折間違われるのだけれど、性別は女。本と映画と芝居の感想頁「COLORS OF CAL LIFE
」主催している。「関西観劇ネットワーク」では読み物を担当。観劇歴一年。1999年の本
数比率は本:芝居:映画=3:2:1くらいだった。2000年はもう少し真面目に本を読む
と共に、超有名劇団や芝居以外のパフォーミングアーツなども観てみたい。・・・という
ことは小劇場での観劇は減るのかな?