よっしーの上半期ベストアクト


遊気舎『FOLKER』
劇団☆新感線『直撃! ドラゴンロック2』
OMSプロデュース『ここからは遠い国』
『蒲田行進曲』
該当作品なし

特別賞 惑星ピスタチオ『ショートカッツVol.1』

そうかもうベストアクトの時期か、やれやれ…と思って書こうとして愕然とした。
 

「5つも浮かばん」

 そうなのだ。この時点ですでに「5つじゃ足りん〜!」と焦ってた昨年と比べ、今年はどうも不作気味。これは最近の芝居のクオリティ云々というより、確実に私個人の問題です。なにせこの上半期は芝居見る時間のないぐらい仕事忙しかったし、5月にはその余波を受け体こわして入院、そして自宅療養の日々を送るという大波乱状態だったのです。そんなんで例年の3分の2ぐらいしか芝居見てないので、本当はあまり選ぶ権利ないかもしれん。


 さて1位は上半期どころか、99年を通じての関西演劇ベストアクトを受賞すんじゃないかと思われる『FOLKER』です。楽しげなフォークダンスのシーンに残酷な悲話が絡み、物語全体は推理小説仕立てで語られていく……作・演出の後藤ひろひとの神技的なストーリーテリングの才能を、余すところなく発揮した奇跡の舞台でした。ところで今回のキタ芝の上半期ベスト、1位はきっとこの作品だと思う。予言。


 2位の新感線ですが、私今までいのうえひでのり脚本のものを面白いと思ったことなかったんです。それが今回はまあ……久々に後頭部どころか頭全体ガンガンするほど笑かしてもらいました。やっぱり主要キャスト総出演っつーことと、三宅弘城+池田成志の客演陣がドンピシャはまったのが勝因でしたね。ちなみに一番笑ったのは、やたら美術がリアルだった『ライオンキング』のパロディ。絶対四季にもディズニーにも無許可で、ゲリラ的にやってるんだろうなあ。最後までディズニーにバれないことをお祈りいたします。


 3位の『ここからは遠い国』は、オリジナルとは全く印象の違う舞台を作り上げてしまった、演出の内藤裕敬の力技に。良くも悪くも生真面目だった太陽族版と正反対に、その生真面目さをどこか茶化したような、遊び心のある演出が心地よかったです。松本キックもめちゃ格好よかったし。彼には今後もああいうシリアスな芝居をやってほしいっすね。
 『蒲田行進曲』が4位なのは、SMAPの中で私が一番ご贔屓にしてる草ナギ剛が出てたからという説も、一概に否定できない(笑)。だけど何よりもこの戯曲自体の持つ、人が人を愛する事への(その対象が同性であれ異性であれ)凶暴なパワーに圧倒されたってことが大きいかな。一歩間違えばマイナスになりかねない歪んだ愛の力を、明るく滑稽に描けるってことにつかのすごさがある…と、劇評家風に言えばこういう感想を持ちました。


 というわけで、年間ベストに入るぐらいの芝居はこれぐらい。今一歩って感じのが多かったけど、その代わり暴れ出したくなるぐらい最低な芝居もなかった。おおむね平均的な舞台が多いなというのが、99年上半期のヨッシーの総括です。でもって特別賞のピスタチオですが、これはHEP HALLオープン記念の特別ショーって感じで、他の舞台とは一線を画す内容だと思ったので、今年一楽しかったけど選外にしました。それと本当の個人的No.1は、実は病気を押して名古屋まで見に行った少年王者舘番外公演『北斗』であったということを追記しておきま


福田転球(遊気舎『FOLKER』)
腹筋善之介(惑星ピスタチオ『小林少年とピストル』)
松本キック(OMSプロデュース『ここからは遠い国』)

役者の1位だなんてそんな…そんな…決まってるじゃあないですかぁ…(照)。今や橋本さとしをけ落とし、私の心の中の好きな男優第1位の座を獲得した福田の転球さんっすよ〜〜〜。あの無精ヒゲの似合うワイルドな風貌、軽快なダンシング、そして場内をかっさらった『FOLKER』でのプロレス風客席乱入入場……あああ(腰砕け)。もう言うことなしっす。しかしあの舞台、楠見薫も山本忠もよかったから、下手すると『FOLKER』3人衆で上位独占になりかねなかった。それぐらい、役者の素晴らしさにも助けられた舞台だったんですなあ。


 「それを楽しみにするのは邪道だ!」と西田シャトナー氏に怒られそうでも、毎回ピスタチオの舞台では、腹筋善之介1人コントタイムを楽しみにしてしまう私。総合では選外だった『ショートカッツ』中で上演された『小林少年とピストル』では、そのお遊びが大爆発! もう誰にも止められないって感じで突っ走ってましたねえ。2回見たら、2回目の方がたしか5分ぐらい長くなってたし…ご堪能させていただきありがとうございますってことで、感謝感謝の2位ランクイン。


 松本キックは『ここからは遠い国』感想で述べた通り。「松本ハウス」からは想像できないぐらい暗いムードを漂わせた、生真面目な教団信者を大好演。太陽族の森本研典が「他の誰にも演じられない」と思わせるほど完璧に演じた役だっただけに難しいと思われたのですが、彼とは印象の違う尖った雰囲気で演じ切り、シリアスもバッチリいけることをしっかりアピール。でもま、大川興業でもけっこうシリアスやる時はやるんで、行けるんじゃないかとは踏んでましたがね。いやホント。


 役者部門次点は『蒲田』の草ナギ剛。ちょっとだけファンの私としては手放しで褒め称えたい所だけど、彼の実力を判断するにはもう2,3本舞台を見てみたいっつー気がする。確かにイイ出来だったんだけど、文字通り「役得」ってところがあったからね、あの役では。