1 | 維新派『王國』 |
2 | 『ミハイル・バシリニコフ&板東玉三郎』 |
3 | 少年王者舘『マッチ一本ノ話』 |
4 | 転球劇場『穴』 |
5 | 『身毒丸』 |
総評
今年に入ってからアングラ系小劇場演劇だけでなく、商業演劇とかダンスとかも見始めた私です。正直言って今まで抵抗あった世界だったんだけど、やっぱ見てみると面白いモノはあるんだよなー、当然だけど。まあそんなわけで、例年とはちょっと色の違う芝居が私の心のベストに入り込んできた、98年の下半期でした。
で、今年の1位はやっぱり維新派。もうよっぽどの失敗作を持ってこない限り、私のベストに居座り続けるっしょ、こりゃ。会場前の屋台村なんかも含め、南港全体を別世界へと変貌させてしまう。こんなことできるの日本中で維新派しかいてません! 今回は何と言っても、役者たちが丸太の上でパフォーマンスするオープニングが最高でした。
2位の『ミハイル&板東』は、世界屈指のダンサーである2人の絡みを見れたという点で、むっちゃ幸運だった。バシリニコフの重力を感じさせない跳躍、玉サマの水の流れよりも更に滑らかな指と腕の動き(ある人が『パンをちぎる動作さえ美しい!』とのたまってた)、どちらも人間とは思えなくて、文字通り瞬きもせずに見入ってしまいました。
私の上半期1位だった少年王者舘の『マッチ』は今回3位。『それいゆ』ほどの衝撃はなかったからね(なのに名古屋でも2回観た私は何者?!)。実は下半期の本当のベスト1演劇は、少年王者舘プロデュース『OSHIMAI〜くだんの件』だと思うけど、関西の上演はなかったからあえなく除外。でも今年の夏に京都・大阪でやるんだと。見て見て!
4位の転球劇場は、今私が一番注目してる劇団です。日常からほとんど脱却しないワンシチュエーションのお笑い…というスタイルを、今回で見事定着させた感じ。ヘタすりゃ退屈に終わりそうな設定を、強烈なキャラ立てで見せていく技量は並大抵のもんじゃありません。お笑い系の劇団の失速が目立つ中、彼らの台頭は明るい話題でした。
で、5位の『身毒丸』ですが、大学時代から好きだった寺山修司の世界が見れたっつーだけでも感激モン! まあ蜷川演出は寺山に比べ、やや洗練され過ぎて情念に欠けるとのことですが、美しさすら感じるぐらい妖しき世界には充分圧倒されたっす。テラヤマ版のビデオ買おうっと。
1 | 佐野史郎 |
2 | 藤原竜也 |
3 | 水谷ノブ(少年王者舘) |
4 | 福田転球(転球劇場) |
5 | 大庭新二(ランニングシアターダッシュ) |
上半期も書いたけど、どうも最近芝居以上に印象に残る役者って思い当たらない。上位2人はいわゆるマスの人ですが、これは芝居がすごいから印象的なのか、有名だから印象的なのか、どうにもわかんなかったりします。あ、上で褒めちぎった板東玉サマは、ダンスはよかったけど『夕鶴』での演技は寝てしまったから除外。
でもまあ、1位の佐野史郎。『マラカス』のオープニングで窓から顔をヌウッと出すそのシーンでは、妙な不気味さに退いてしまいました。元状況劇場なだけに、やっぱ唐作品でこそあの存在感は光ってましたね。
2位の藤原君はまず、若干16才で「しんとく丸」という複雑なキャラを見事演
じきったことにまず驚き、それまで舞台に立った経験が一度もなかったという話を聞いてもう1回驚いた。たった1年かそこらで、あの白石加代子とタメ張れる演技力をつけちゃうだなんて、美少年なだけでなくとんでもねー天才じゃないか。エラい子が出てきたもんだ。
水谷ノブさんは、天野戯曲の中での笑いの部分と静かな部分でのギャップがた
まらんのよねー。鋭くもキチガイじみた動きで激しく笑いを取るかと思えば、一
転ガラスのように透明感あふれる、静かなたたずまいも見せる。なんというか、
見飽きない役者さんですね。
福田転球さんと大庭新二さんに関しては、横山やすし張りのガラ悪いベタベタな大阪弁が、非常に似合うという共通点がある。乱暴な言葉遣いをしてもどこか憎めない、ってキャラに弱いんスよ私は。どっちも男気のある2枚目だし、劇団も含めて将来に注目、てとこですかね。