よっしーの上半期ベストアクト

●いきなりなんだが、今年ってイイ芝居多いよなー。上半期はプライベートでいろいろあったので、感動しやすくなってたんかなとも思うけど、やたら年間ベスト1級と思える舞台が多かった。もうすでに5つだけなんてイヤイヤってぐらいの上質ぞろいだもん。


少年王者舘『それいゆ』
C.T.T.事務局『のたり、のたり。』
芝居屋坂道ストア『あくびと風の威力』
谷省吾プロジェクト いるかHotel『青い街』『破稿・銀河鉄道の夜』
MONO『きゅうりの花』
特別賞 遊気舎『エル・ニンジャ対サイボーグドラゴン』


 上記のように今年上半期は、5つに絞るなんて残酷だーってぐらいの豊作状態なのですが、その中でもぶっちぎりで私の心の1位を獲得したのが少年王者舘。


 話の中心になったのは、20世紀に出現した2つの太陽=広島・長崎の原爆投下なのですが、それだけで終わらない、もっと様々な世界が2時間弱の舞台の中に凝縮されていたと思います。東京公演も含め3回見た私ですが、そのたびに新しい発見や解釈が生まれていく奥深さにビビリましたね。天野天街復活を高々と宣言するにふさわしい大々好舞台だったのでした。



 毎回京都の演劇人を招へいしたプロデュース公演を行うC.T.T.は、桃園会の深津篤史の台本を、遊劇体のキタモトマサヤ演出で上演。

 自傷行為でしか愛情を表現できない青年を中心に、ハードな人間模様を描ききった舞台です。現実でこんな男に交際迫られたら絶対ヤだろうに、上演終了直後には「ああ、こんな愛もいいよなぁ」と知らず知らず思わせてしまった完成度、というより説得力の高さを評価しての2位ランクイン。来年2月に、今度は深津さん自身の演出で再演されるそうです。必見!



 一部で評判を呼んでいる女の子劇団・芝居屋坂道ストアですが、満を持して阪神・淡路大震災に取り組んだこの作品は……泣けたねぇ。

 地震で友人たちを失った主人公の心の解放を描いたあのシーンは、変に演劇慣れした私すら大きく揺さぶった名場面でした。嫌みなくキャピキャピしてて、でも伝えるべきテーマはしっかりと押さえてて、いい意味で新人とは思えないほど手慣れた芝居作りができる劇団です。

猫のお尻亡き後、関西を代表する女性集団として突っ走っていってほしい。



 坂道ストア以上にストレートな震災芝居を行ったのが、4位のいるかHotel2本立て。


 震災ものって、実際にあの時のあの現場に立ち合った人間からすると、どうもウソっぽく見えがちになるのに、これは谷“偽ブルース・リー”省吾の繊細な演出によって「あの時の、あの現場」をビビッドに感じられる舞台となってました。

 歴史的な大災害の記録を残す作品として、後生まで語り継ぐべきでしょう…と思ったら、これも来年東京公演がほぼ決定したそう。東京人必ず見るべし。テレビでは絶対映さなかった震災の裏側と真実と、そしてポジティブな癒やしが、この2本にはありますから。



 で5位なんですが、これハッキリ言って迷いました。

 大人計画もジャブジャブサーキットも、ナイロンの『ガンビーズ絶体絶命』(GO!GO!は期待はずれ)もよかったし…結局「京の劇作家シリーズ4」の『家を出た』演出と合わせて評価ということで、『青春トライ'98』で2回も殺された(笑←見た人だけ笑ってくれ)土田英生率いるMONOに軍配を挙げました。村おこしに取り組む若者の姿を淡々と描いてるのですが、淡々としたくせに(したから、か?)滑稽でねえ…今までになく笑わせていただきました。ところで劇中の「イェイェ節」作曲者に最優秀作曲賞を差し上げたいのですが、そんなんないんすかotoさん?(回答:ないっす。byoto)


 さてベスト5に加えて私の独断で設けた「特別賞」ですが、この『エル〜』は演劇っつーよりイベント的なノリの公演だったので、別格扱いということにいたしました。試みとしては今年一面白かったけどね。3回見たぐらいだし。


YOSSYプロフィール
 演劇とロックを愛する27歳の女。今年の上半期はいろいろあって転職したり、心の神様ローリング・ストーンズが大阪に来たりでなかなか大変だった。でも上半期で一番ビビッたニュースは「白浜サファリパークに皇帝ペンギンが大量に来たこと」。