新劇場こけら落としラッシュに湧いた04年後半。お祝いを込めインディペンデ
ント・セカンドから売込隊ビーム、アリス零番館-ISTから藤岡+栃村結貴子の
2本立ソロパフォーマンスを選出。「セブン・ルームス」は、同時刻のひとり
芝居7本を集約して大団円を迎える設定、劇団員それぞれのアテ書きと多角的
な劇構造が見事にマッチ。ひとり芝居に応えた役者7人のがんばりで7本の足
し算をはるか上回る7乗のおかしさ、7つの視点から見る多極構造のおもしろ
さを堪能。対するはひとり芝居とソロダンスの2本立、ち密な打ち合わせで現
実と虚構その2面性にテーマを絞り、客席と舞台を入れ替える表裏2面の演出
ともあいまって演じることの虚構と、現実はどこまで真実かを問う。
セカンドの母体となったインディペンデントは劇場を大改造、和室に作り直し
て9劇団が競う。劇場ではなく和室にくつろいで襖ごしに芝居を覗く。秀逸な
アイディアに芝居のリアルさも増す。とりわけ評伝劇を標榜するよろずやが上
村松園の一生を描き、ファンタジックな演出で感涙を誘う。
既成のコヤで最も狭小なカラビンカも気を吐く。細い階段を上る劇場を、住む
人もない蔵の2階に見立て、かつてそこで結ばれ叶わなかった青春の愛と、田
舎に新天地を求める現代の夢が交差する。ほのぼの暖かく、けれどしみじみ苦
い人生模様がこの劇団ならではの筆致で描かれる。
2年ぶり石原正一ショーは年末恒例、落ち目NHK紅白をしのぐ40人オーバー
の豪華メンバー、勢ぞろいダンスはヘップの舞台が狭い、狭い。全員惜しげも
なく隠し芸を披露、広げ過ぎた風呂敷をまとめるに演出は必死。笑いこらえる
こちらも大変。
「セブン・ルームス」はアテ書きがよく出来ており、甲乙つけ難し。座付き作
演出家の役者の観察と愛をびしばし感じる。が、あえてひとり選ぶとなればこ
れっ、じゃじゃ〜ん「指鉄砲の女」こと梅本真里恵!! ホントみんな惜しいん
ですよ、しゃらくせえ〜のお兄さんや、縛りはおろか蝶結びもできないお姉さ
ん、ごめんなすって。
「三人姉妹」は作品ベストもおかしくない、原作付きが減点だっただけ。古典
チェーホフに恐れを知らぬ作・演出のナカタアカネの才気と軽やかにロリータ
演じる役者・なかたの愛くるしさ、その落差にオジサンは胸きゅん、です。
プロデューサーが代わってヘップも活発。なかでも、関西小劇場の精鋭を集め
た「ハムレット」プロデュース公演はエポックメイキング。黒田武志を起用し
た装置ビジュアル、荘厳な音響、テクイジ中心の亡霊アンサンブル、鋭角的な
殺陣、ゴシックロマンとボンデージを取り入れた衣装など現代のハムレットを
作る気概十分。惜しむらくはオーデション選考のオフィーリア役がイマイチ。
が、欠点を補って余りある浅田百合子のハムレット。殺陣もこなせる悩める王
子のカッコ良さに口笛吹いて応援しちゃう。(雅)
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