よっしーの03年下半期ベストアクト


作品部門

第1位 

芝居屋坂道ストア『木造モルタル式青空』
第2位 

珍しいキノコ舞踊団『FLOWER PICKING』
第3位 

ユリイカ百貨店『婦人』
第4位 

MONO『京都11区』
第5位 

ヨーロッパ企画『サマータイムマシン・ブルース2003』
次点

エッヘディナーショー『浪花Burning』

本当に下半期のベスト3を上げろと言われると、1位:燐光群+グッドフェローズプ
ロデュース『CVR』 2位:転球劇場『ドラゴン』 3位:少年王者舘『それい
ゆ』…になるんだけど、関西以外の集団の公演か再演だけという寂しい結果になって
しまうので、ここは例年通り「新作であること」「関西の集団もしくは、他地方の集
団でも関西のみの公演であったこと」「できるだけ若い劇団にすること」という、私
が勝手に考えたキタ芝的見解の中で選ばせていただきました。

久々に新しい劇団員を迎えた芝居屋坂道ストアの新作は、阪神大震災をテーマにした
名作『あくびと風の威力』に匹敵する傑作でございました。恋人を事故で失った女
性、その恋人を誤って殺してしまったカップルetc.、様々な喪失感と罪悪感を抱える
人たちが、記憶をキーワードに再生へと向かう様を描いた物語は『あくびと…』と共
通する物があります。ただ内面の痛みをストレートに出していたあの当時と違い、今
はその痛みを客観的…というか、イチビリに思えるほど突き放してる(恋人の死の描
写をハンバーグに喩えちゃうシーンが象徴的)。その突き放し具合が「軽やかな残酷
さ」とでも言うのか、ちょっと他の劇団にはできないと思えるほどの境地に行っ
ちゃってた気がするのです。その独自性によって、今年下半期のナンバー1に挙げさ
せてもらいました。

珍しいキノコは、びわ湖ホール大ホールの舞台だけでなく、ロビーから楽屋から劇場
の外までくまなく使い、ダンス公演というよりも劇場見学ツアーってな雰囲気の新作
を上演。みんなで躍りながら次の会場へと移動したり、主宰・伊藤千枝のビキニ姿&
歌を堪能できたりと、めちゃくちゃお気楽&遊び心たっ〜ぷり、な公演でございまし
た。ダンス見に行ったというより、タイトル通りみんなで“お花摘み”に行ったって
いうか、そんなレジャー感覚な一時でしたね。いやお花摘みというよりキノコ狩りか
?(笑)

3位は京都の新人劇団・ユリイカ百貨店です。客観的に見ると、まだ3位に取り上げ
るようなレベルの作品ではないと思うのですね。ただ作・演出のタミオが作る世界
は、確かに前評判通り野田秀樹や天野天街の舞台に共通する物がありましたが、同時
に彼らにはない彼女なりの美意識も強く感じられたのです。むしろ前出の2人より、宮
沢賢治や稲垣足穂の童話に近いんじゃないかな? その衝撃度だけを基準にすると、
これは間違いなくベスト3級。なので芝居屋坂道ストアと同じく、その独自性と将来
性を買っての3位とさせていただきます。

4位のMONOは、近未来の京都を舞台に、京都という町の閉鎖性と1つの大きな目標を
持った集団ならではの奇妙な関係性を同時に描いた秀作。一見京都だけを批判したブ
ラックコメディにも思えますが、京都の話と見せかけて実はナショナリズムの傲慢さ
や不気味さを問う話でもあったよなあ…と考えると、少しゾッといたします。土田英
生英国留学の置きみやげにふさわしい、痛烈な作品でございました。その土田さんは
現在、留学生活を記した日記を劇団HPで連載中。これがなかなか興味深い内容なの
で、皆様もぜひチェックしてね。

5位のヨーロッパ企画は、舞台の完成度だけで考えるとベスト1にしてもおかしくな
い出来。ただセリフを全面的に書き換えたものの、構成はほとんど初演と変わりがな
い…いわば「半分新作・半分再演」という微妙な舞台だったのですね(ちなみに「本
当のベスト3」に上げた転球劇場と少年王者舘の再演は、どちらもほぼ初演通りの内
容)。でも全くの選考外にしちゃうのはあまりにも惜しい気がするので、せめて5位
という事にさせて下さいませ。

次点のエッヘディナーショーですが、これは私にとってベスト1と言えるほど面白
かったけど、なんせ制作に関わった分どうしてもひいき目が出てしまいますので…つ
つしんで次点ということにさせていただきますです。

役者部門

第1位  橋本じゅん(『阿修羅城の瞳』)
第2位  北村守(スクエア『打つ手なし』)
第3位  中井和味(芝居屋坂道ストア『木造モルタル式青空』)

えー、役者部門の方は「関西の役者さん」とだけ限定してランダムに選ばせていただ
きました。もう『阿修羅…』の橋本じゅんはぶっちぎりっす! 師匠、付いていきま
すって感じです! 二幕の1/2ぐらいしか出番なかったのに、その破天荒な演技…
というか、単なる大暴れぶりに、二幕の芝居は八割方じゅんさんしか印象に残ってな
いという恐ろしいことに(笑)。轟天のテーマが松竹座に流れた時は、今年の笑いの瞬
間最大風速を記録(当社比)いたしましたです。もう大好き。
スクエアの北村さんは、今回の刑事役が特に秀逸でしたね。取り調べを受けてる大
ファンの漫才師との絶妙な距離の取り方、隠そうとしても体中から発散される「好き
好き光線」の強烈さ。もう客席から「早くカミングアウトしてしまえ!」と言ってし
まいたくなるほど、いじらしさ大爆発でございました。この微妙な空気の漂わせ方、
そして会話の間の取り方、この公演での彼の演技は全てにおいて文句なしでございま
した。
芝居屋坂道ストア久々の新人、中井さんはその舌っ足らずな第一声を聞いた瞬間「え
え子見つけたな〜」と感心させられました。声といい小動物的なたたずまいといい、
デビュー作ですでに自分のキャラクターを確立しちゃってるところがすごい。多分度
胸満点な娘さんなんでしょう。本多真理とともに、坂道の繊細な劇世界をいい意味で
引っかき回してくれる女優さんになりそうです。期待度を考慮しての3位ってこと
で。


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