miyabi.nの03年下半期ベストアクト


作品部門

第1位  珍しいキノコ舞踊団「FLOWER PICKLING」びわ湖ホール(8/10)
第2位  TAKE IT EASY!「SHAKESPEARE」KAVC(12/21)
第3位  Ugly duckling「アドウェントゥーラ」ウイングフィールド(10/24)
第4位  劇創ト社「琉球白書」HEP HALL(11/19)
第5位  WI'RE「NOorMAL」京都芸術センター(12/6)

役者部門

第1位  田中亜紗子(PM/飛ぶ教室)藤澤清造3本「嘘」
第2位  豊島由香(TARZAN GROUP)京都ビエンナーレ2003「宇宙の旅、セミが鳴いて」
第3位  なかた茜(トランスパンダ)「サディスティック・ジャンキー」

びわ湖ホール大ホールおよび周辺を使い切ったキノコの「花摘み」は、真夏に
ひと足早く秋を堪能できたキノコ狩ピクニック。カフェで談笑するメンバーが
テーブルや椅子をすりぬけていきなり踊りだす。そのままロビーへ流れ込み、
ダンスしながら劇場内へ消える。チケット買えなかったお客さんや通りすがり
の人もそこまでは無料体験のサービス。劇場内へ案内されるとびわ湖を一望で
きるホワイエを背景にした贅沢なダンスが既に繰り広げられている。何と劇場
外の湖岸にも別のメンバーがいて、踊ったりカラオケ歌ったりして散歩途中の
人をびっくりさせる。次に観客は楽屋に誘導され、お茶お菓子をいただいて少
し出演者気分、と思ったら本当に振付られ大ホールで踊らされる。客席に誰も
いない大ホール舞台で踊り狂う観客たち、うーん、シュール。もちろん、その
後はキノコたちのお口直しダンス。広い客席どこでも自由に座った観客へ、舞
台から飛び出したキノコが目の前に来ての乱舞。ホント貴重な体験、真夏の白
昼夢。

TAKE IT EASY!「SHAKESPEARE」は、シェイクスピア幻の未発見作デッチ上げの
顛末とその贋作を上演する劇中劇が2重構造で進行する。主役の交代や恋愛感
情の交錯が現実と劇でシンクロする構造が鮮やか。贋作は「ジュリアス・シー
ザー」の続編、その息子を主人公にした「シーザリオン」。シェイクスピアの
テイストをそっくり真似た上に、数々の名作の名言を散りばめて才気に富む。

「アドウェントゥーラ」は再演ながら狭い会場から役者がハケない新演出で、
濃密に終末の世界を描く。静かに諦観するのではなく、エネルギーに満ちた終
末に新たな希望すらわく。ヒロイン吉川貴子の可愛い顔のおとぼけもたまらな
い。

今イチオシのト社、集客もうなぎ昇りでヘップが満員御礼。音響照明も美しい
が、最大の魅力はほぼ素舞台にめまぐるしく切り換わるシーンとひとり数役の
役者アンサンブル。男が泣けるイマドキの心意気ドラマ。

ソリッドに退廃の美学を狙うWI'REは意外に硬派。文学のビジュアル化に挑戦
する姿勢が爽やか。

細くしなやかな身体のどこにあの強靭ないじらしさを隠しているのか。田中亜
紗子が「嘘」で見せた身に覚えない不貞をなじられる妻の哀しさ、そして夫に
もたよるべき男にも愛想をつかした女の怒りは観る者を震わす。

演劇プロデューサー遠藤寿美子の遺作となった「宇宙の旅、セミが鳴いて」。
宇宙を放浪するしかなくなった宇宙船内の人間模様を描いて混迷する現代を映
す。豊島由香は、愛をイジメで表現する船長の仕打ちに耐えるコックを演じ、
夏の一瞬だけ輝くセミに似た人生の哀しみと美しさを写し取る。

作・演出・主宰のナカタアカネは作家の評価も高いが、それを演じられるのは
本人の役者・なかた茜だけ。カレ取っ替えひっかえ(でも憎まれず、別れても
いいお友だち)の若作りキャバクラ嬢、実は演劇少女の設定は、現実がどうあ
れなかたそのもののリアル感。コケティッシュで知的な彼女にクラクラッ。

次点は、作品:みかんがむ「水辺にある庭」、役者:中田彩葉(犯罪友の会)。

miyabi.n



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