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の演技） |
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| クロムモリブデンは関西でいまもっとも充実している劇団ではないだろうか。「直接 KISS」はハイジャックの挙句、犯人もパイロットを含む乗務員も皆死んでしまった旅客 機の上で助かることを諦め、自暴自棄になった乗客たちの恋愛劇というツイストがきき すぎてわけが分からなくなったいかにもクロムらしい設定の舞台だった。美人揃いの女 優陣が魅力的なのだが、それでも青木秀樹が織り成すヘンテコな世界を支えるのは森下 亮と板倉チヒロに代表される壊れたおもちゃのような役者たちである。もともとカルト な魅力に溢れた劇団ではあったが、最近はダンスのような身体表現の多用など音楽劇と してのエンターテインメント性も兼ね備え、次回作が一番楽しみな集団なのである。 今年上半期は深津篤史の活躍も目立った。吹田メイシアターの近松劇場「月が乾く」 、桃園会の「よぶにはとおい」といずれも秀作の舞台３本のなかで、あえて深津企画「 春の音、曇天。をつけてみる」を選んだのはダブルキャストで入った板倉チヒロが演じ た人物のなんとも痛くてせつない人物造形が深い印象を残したからだ。 TAKE IT EASY!は今私が個人的にもっとも楽しみにしている若手劇団。作演出、役者 がすべて女性という「女の子」劇団だが、サービス精神満載でエンターテインメントに 徹していながら、作家の中井由梨子は劇世界のなかにしっかりと骨太の構造も作り込む ことができる腕を持っているのが魅力であろう。「御法度。」は神戸に本拠を置いて活 動してきた彼女らの大阪進出第１弾だが、仏教系のエリート校アマンダラ学院を舞台に 女優全員が男子学生を演じるという得意の学園コメディ。少女漫画の学園コメディの登 場人物がそのまま抜け出してきたような軽快な味はここならではのもので、なかでも主 人公を演じた前渕さなえのコメディエンヌとしての魅力が爆発した舞台でもあった。 大阪・南港に自分たちで仮設劇場を建てて、手作りで行なわれたラフレシア演劇祭は 多くの舞台成果を残した。LOVE THE WOLRD「リラックス」は西田シャトナーの新作で死 刑が国民的祝祭として定期的に開かれる寓話的世界を舞台に展開する仮面劇であった。 若い俳優たちを主体とした劇団でまだ未熟なところも目立つ上演ではあったが、はしの ちなつの美術、いいむろなおきの集団マイムの演出を取り入れ、惑星ピスタチオ時代と は明らかに違う演劇的実験に取り組んだ舞台は私に取ってはすごく刺激的なものだった 。最後の場面で天野美帆は台詞なしに少女リラを演じきって忘れ難い印象を残した。 一方、第２劇場「正義の存在」は野外ならでは（？）の2階建ての実物大の家屋のセ ットにまず驚かされた。内容は重層的なメタファーを駆使して正義とはなにかに 迫る舞台で、ベテラン、四夜原茂の健在ぶりを見せ付ける馬鹿馬鹿しくもおかしい舞台 であった。 |