よっしーの02年年間ベストアクト


作品部門

平成中村座 『夏祭浪花鑑』『法界坊』
ヨーロッパ企画+シュガーフィールズ 『Europe Fields Forever 』
上海太郎舞踏公司 『OPEf』
ベトナムからの笑い声 『ハヤシスタイル』
『カラカラ〜#1吉永の場合・#2遠山の場合』

番外

維新派『カンカラ』
オールナイトイシハラ『漫画朗読日本一決定トーナメント』

 実は「本当のベストアクトを挙げろ」と言われると、東京でしかやらなかった物と
か、大手プロデュースの公演ばかりになってしまうんですが。なのでココでは関西で
しかやらなかった芝居か、あるいは関西在住劇団の公演のみに絞ってみました。
 しかし改めて上位5作品を見てみると、風刺や主張なんぞ皆無のスコーンと気楽な
娯楽芝居が、2002年の私の気分だったようです。シュガーフィールズの音楽ライブが
あれよあれよという間にヨーロッパ的コメディの世界に飲み込まれていく
Europe… 』。クラシックの替え歌を中心に様々な“音”を笑いのネタにして見せた
上舞。そして衣裳というより「装置」なかぶり物を駆使した力業コメディで見る者を
ねじ伏せたベトナム。また芝居と言うよりイベント的なものだったので番外にさせて
いただいた「オールナイトイシハラ」も、やはり娯楽一色な爆笑公演でしたね。現在
関西にまん延している多くの自称・エンタメ系劇団が、色々な要素を盛り込みすぎて
中途半端になってると思えるのに対して、潔く「笑い」のみを追求した彼らの舞台に
は清々しささえ感じたものです。
 しかしその中でもやはり白眉だったのは、江戸時代の歌舞伎小屋を建物ごと再現し
た「平成中村座」大阪公演。「歌舞伎公演はキタ芝向きじゃない」と思われるかもし
れないけど、これはマジでジャンルの垣根を超越した生粋の“エンタメ芝居”だった
と思うので、会えて今年のNO.1に挙げました。歌舞伎が大衆の娯楽のためだけに尽力
していた時代にタイムスリップしたような劇場空間と芝居には、まさしく「エンタメ
芝居の原点」と断言できる圧倒的な技術とパワーがありましたです。値段の高さが
ネックになったのかもしれないけど、これほど「もっと若者観に来いよ!」と悔しく
思った公演はなかったですねえ。
 そんな娯楽芝居が多くを占める中、実験的・文学的な作品で相変わらずの活躍振り
を見せたのが深津篤史。特に『カラカラ』2連作を初めて同時に上演したこの舞台
は、その構成の抜かりなさに改めて気付かされたことと、震災をモチーフにした作品
を神戸で上演することの意味の重さに、深く感服させられたのでした。同じく震災を
取り扱った新作『blue film』も、同じぐらい衝撃度の強い作品でしたね。それと今
回新作公演が岡山県のみだったため泣く泣くベストから外した維新派、これも有無を
言わせぬ桁外れのスペクタクルだったということを特に記させていただきます。

役者部門

岩木淳子(劇団ジャブジャブサーキット)
黒川猛(ベトナムからの笑い声)
本多真理(芝居屋坂道ストア)

これもキタ芝的に、関西小劇場で活躍する若手役者だけに絞らせていただきまし
た…と言いつつ、いきなり関西ではなく岐阜県の劇団の役者がベスト1になってます
が。しかし自分の劇団だけでなく『カラカラ』やプロジェクト・ナビなどにも積極的
に出演し、人なつっこい笑顔と演技でどの舞台でも大きな印象を残した岩木さんは、
2002年で最も成長した役者と言って差し支えないでしょう。
 ベトナムの黒川君は、名前通り(笑)猛々しいツッコミが魅力でしたねえ。最近若手
の役者で、かようにストロングスタイルなツッコミを見せる役者ってなかなかいない
から、かえって新鮮でしたね。ああ、私も一度ハリセンで思い切り頭叩かれたいなあ…。
 芝居屋坂道ストアの最若手・本多さんは、昨年に続いてのランクイン。子犬のよう
に元気だけど世界から数センチ浮いてるような、その何とも言いがたい雰囲気で今年
も強烈な印象を残しました。特に『雨ニ浮カブ』でのコメディエンヌぶりは、筆舌に
尽くしがたかったっす。



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