関西演劇に次代をになう新しい胎動をひしひしと感じる。南河内万歳一
座と新感線がひっぱった第1世代、桃園会や太陽族、八時半、MONO
など主宰を兼ねる作家を輩出した第2世代に続き、演劇の概念をも取っ
払う才能が群雄割拠する。南船北馬一団、Ugly duckling、スクエア、
WI'RE、売込隊ビーム、そしてデス電所、ヨーロッパ企画、A級 Missing
Link。J演劇を標榜し時代の気分を写し取ったTANT RYTHMの解散は、現
在が表現スタイルを模索する過渡期だと教える。あるいは惑星ピスタチ
オに似て、早過ぎる登場の悲劇だったのか。ピスタチオを継ぐエンタメ
系としては世界一団にも注目だが、ビジュアルを重視した電視遊戯科学
舘の躍進がすさまじい。
ART COMPLEX 1928を大正ロマンで包み、白骨の恐竜を暴れさせた「ノス
フェラトゥ」のケレンにも驚いたが、ニットキャップシアターと組んで
京大西部講堂を、戦時の満州そして近未来戦さ中に染めた「新京の動物
園」の壮大な演出にはたまげた。人の嫉妬や悪意を嘲う神のごとき虎、
実物大戦車のリアリティそして美学。憑依する殺意、操られる人間とい
う物語の核心に背筋も凍える。維新派にも迫ろうかというビジュアル系
の雄。
デス電所も演劇のワクに収まらない映像、音楽とのコラボが魅力。物語
からハミ出しかねないパンクさ、おふざけギリギリのコント。そこは現
実と変わらぬシュールで破たんした世界、だからこそ笑うしかないせつ
なさがあふれる。
演劇というシステム、いや社会構造そのものに異を唱えるA級 Missing
Link。芝居も現実批評の1スタイルだと自覚、観客にもそのこだわりを
投げかける。舞台が崩される時、私たちが安住している社会そのものの
ゆらぎを知る。欠落した輪の繋がりを求める不思議な旅、知的冒険にい
つしか招かれている。
ピンボールのように跳ねる会話、次々とステージをクリアするゲーム感
覚のシチュエーションコメディ。ヨーロッパ企画を観た後では三谷幸喜
が化石に思える。新しい笑いは新しいレシピほどに貴重、今を映すその
力が明日の扉を開く。
評価の定まった劇団より新しい世代にチャンスを心がけたゆえ、実力派
には遠慮いただいたが、先人の開拓を忘れてはなるまい。芸術創造館が
稽古場として賑わうのを見るたび、故中島陸郎氏のアイディアが生きて
いることを喜ぶ。桃園会「ハルのいる家」は、会場のウイングフィール
ドの元プロデューサー中島氏へ捧げた直截な感謝と祈りである。
エビス堂大交響楽団のオカモト國ヒコが立ち上げた別ユニット・アンテ
ナ劇場。第1作のタイトルロールを飾った梅本真里恵。優しいお姉さん
を追い続けてどこまでも。冒険ロマンにハラハラドキドキ、ちょっぴり
せつないラストのオチ。小柄な身体で捨て身の笑顔、その純真無垢がハ
マる。
吉川貴子も体当たり演技でせつなさ爆発。悪意渦巻く街の犠牲、災厄か
らの逃走、少女っぽい容姿で精一杯立ち向かって凛とした女の意地を見
せる。
「永遠の愛を誓って」のストレート過ぎるタイトルには、ちょい引ける
が、素直にぶつかった村井千恵の健闘がすがすがしい。余命わずかの病
気と向き合う勇気、くじけそうな心を支える愛の強さ、生命のはかなさ
が真の美しさに昇華される。
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