miyabi.nの01年下半期ベストアクト


作品部門

タイタスプロジェクト「のにさくはな」
太陽族「Re-Born」
ヨーロッパ企画「12人の追い抜けないアキレス」

役者部門

加納亮子(桃園会)「のにさくはな」

美津乃あわ(ファントマ)「エンジェルダスト」「クレオバトラ」

樋口美友喜(Ugly duckling)「家庭排水通路の法則」

関西演劇界の昨年の後半はタイタスプロジェクトに尽きる。現代の病理を怜
悧なタッチで暴き、劇場の空気をち密に埋める深津篤史の脚本が、ファンタ
スティックかつ豪腕をもってなるキタモトが野外劇化するとあって、観劇前
はどう融和するのか一縷の不安を覚えたが、結果は杞憂。関西演劇界の層の
厚さ、野外劇の伝統とあいまって戦慄のひと夜となる。深津の透徹した世界
観が、野外ならではダイナミズムと溶け合い、下敷きにしたシェイクスピア
の猥雑さや哲学的な崇高さとも妙に通じる。「なにもかも終わっちゃえ」と
世界に絶望するヒロイン・加納亮子が衝撃。

劇団名を改名した太陽族も、久々の新作で気を吐く。今とは、常に古き時間
の堆積の上に成り立つ存在。社会も澱のようによどむ悪意と漉されて透明な
善意が折り重なる。田舎と都会、青春とくたびれた中年、そのどちらにも濁
りと純粋さが交じる。甘酸っぱい過去にも苦さや罪や悔いがあり、その積み
重ねで人も成り立つ。そのすべてを押し流す時間は、やがてそれをも遺跡と
なす。はかない一生であり運命であるからこそ、この一瞬の大切さを噛み締
める。「Re-Born」なるタイトルに「生まれ変われるものならば」けれどそ
れが果たされないのであれば、せめて心引き締め新たな一歩を踏み出さんと
の決意がみなぎる。

ヨーロッパ企画は初めての大阪進出で、早くもrise-1シアターを満杯にす
る驚異の動員力を見せる。シュールで現代的な、まったく新しいセンス。浮
わついところのない軽さ、ポップな味わい。哲学を微量含む掘り出し物の炭
酸水。

某新聞の劇評にも「後藤ひろひとを関西はもっと評価するべき」との意見が
掲載され、それにはもろ手をあげて賛成するが、集客好調なのに評論家には
まったく無視のファントマ・伊藤えん魔にも同じ思いを抱く。これもまたエ
ンタメ蔑視の悪弊。理屈ぬきに「おもろい」「カッコイイ」をもっと認める
べき。押しも押されもせぬ看板女優でありドスの効いた低音の女王・美津乃
あわに栄光あれ。

作家としての評価が固まりつつある樋口美友喜。その才能はもちろんだが、
役者としてもピカいち。美人女優ぞろいのUgly ducklingにあって、ちょっ
と情けないヘンな男のコ役が絶品。キレて暴れ回る時の迫力、その可愛さっ
たらありゃしない。考えてみれば関西は、鈴江俊郎や土田英生、山岡徳貴子
など作家兼任の個性派役者の宝庫でもある。

miyabi.n


小暮宣雄さんのコメントへ