作品部門
(私の中では順不同です)
199Q太陽族最終公演『街踏劇 ぼちぼちいこか』 |
少年王者舘『自由ノ人形』 |
維新派『流星』 |
劇団アグリーダックリング『ひとよ一夜に18片』 |
よっしーの2000年下半期総括
ベテラン勢そろい踏みとなった今年のベスト3。こういうこと言い出すと絶
対年寄のグチに聞こえるだろうからアレですが、ここ最近特に若手劇団の芝居に
おいて、ごく一般的な結論でオチを付けたがる話が増えているような気がいたし
ております。かつて青年団の平田オリザは、表現者の在り方について「私には世
界がこう見える、というのを提示すること」というニュアンスの事を書いていた
記憶があるけど(非常にうろ覚えでゴメンなさい)、その言い方を借りれば「私
には世界がこう見えるけど……あなたもきっとそう思うよね?」となるのでしょ
うか。演じ手側の方から一般的な思想及び感覚にすり寄って行くことで、1つの
テーマに対する観客との共有意識を安易に結びたがっていると感じられることが
あるのです。特に演出面とかのテクニカルな点で、やたら「新しい」を強調した
がる劇団にその傾向が著しい。確かにテクニックも大事なんだ、とは理解できて
はいるのですがね…。それでも私はその手の芝居を見る度に、どうしようもない
居心地の悪さを感じてしまいます。
'60年代アングラ演劇の遺産「街頭劇」をあえて2000年の現代にぶつけ、なお
かつ大阪の隠蔽された「負」の部分を静かに浮かび上がらせた太陽族。アインシ
ュタインもかくやというぐらい宇宙的なスケールを持つ世界観を更に分解・コラ
ージュすることでますます難解にしてしまう、相変わらず複雑怪奇なノスタルジ
ック・ワールドを現出させた王者舘。そして何よりも、ヂャンヂャン☆オペラの
名物だった具象的な美術やストーリーをバッサリと切り捨て、現代社会の不安感
や浮遊感などの「感覚」だけを叩きつけるという、メジャーに逆行する異質な作
品を見せた維新派。次点のアグリーダックリンも加え以上の作品に共通するのは
、先の言い方に従えば「私には世界がこう見えてこう見えて見えて見えて仕方が
ないんだああ!」という、慟哭に近いほどの極私的思想の迸りです。「共感」に
触れる瞬間がたまにあったりしますが、大抵は理解を超えたモノを目撃してしま
った時に感じる「?」な気持ちばかり刺激されることになります。不快にすらな
ったりもします。しかしそういうハードな舞台との思考的な格闘は、真剣な肉体
的格闘(殴り合いとか)を行った後と全く同様に、たまらないほどのエクスタシ
ーとなって残る場合が多いのです。ここに上げたベスト3はそんな濃厚な快感を
味わわせてくれた、下半期の数少ない作品です。そして次点のアグリーは、今後
そういうタフな作品を産み出してくれるはずな貴重な若手という期待を込めて、
謹んで付け加えさせていただきました。
劇場の中において、私は共感など望みません。ただいつまでも闘っていたいの
です。
役者部門
(やっぱり私的には順不同)
工藤俊作(199Q太陽族) |
石丸だい子(少年王者舘) |
水谷ノブ(少年王者舘) |
今年はベスト3に選んだ作品の中からしか役者を選べないということで(何故
ゆえ!)、かようにヘヴィな作品世界群に押しつぶされないほどの強烈な存在感
を放った印象深い役者、という視点でチョイスいたしました。工藤さんは渾身の
盲人演技と体全体から自ずと発散される「負け犬オーラ」が、石丸さんは関節が
常人より三分の一ほど足りないのではと思えるほど人工的な動きと切ない声質が
、水谷さんは(以前もここで書いた気がするが)狂乱の暴れっぷりと寂寞とした
たたずまいのギャップが、いずれも劣らず素晴らしかったです。ベスト3作品圏
外から選べるならば、高木稟(転球劇場『3』)、白河直子(H・アール・カオ
ス『春の祭典』)、内田淳子(羊団『水いらずの星』)の三人で決まりでしょう
。
よっしープロフィール
今年で三十路の大台に突入することにようやく気が付いた、演劇とモンド映画と
最近ではアロマテラピーにも愛を注いでる29歳♀。この前30歳になったばかりの
女性から「なったらなったで吹っ切れて楽しいよ」と報告されたばかりです。本
当だろうか。期待しよう。