1位 | 加藤健一事務所 Vol. 45『審判』(7月、近鉄小劇場) |
2位 | 関西芸術座『遥かなる甲子園』(阪和演劇鑑賞協議会8月例会) |
3位 | 自転車キンクリートSTORE『またもや! 休むに似たり』(7月、近鉄アート館) |
自分でも、なぜこういうベストスリーなんだろう、と思うんですけどね。は
い、全部初演じゃありません。わたしには全部初演だったのですが。とりあ
えず、芝居に触れると、『審判』は、加藤健一さんの一人芝居です。捕虜と
して地下室に閉じこめられ、ただひとり正気のまま救出された元兵士が、裁
判にかけられ、証言台で独白している、という舞台設定で……極限状態に置
かれた人間を、人が極限状態に置かれたら何が起こるかを、あますことなく
描き出していたと思います。芝居としてのおもしろさも十分でした。
んで、こんなの掲げるのわたしだけだろうな、の『遥かなる甲子園』。「ど
うせ予定調和的お涙頂戴物語なんだろう」と少し斜にかまえて観ていたので
すが、芝居が進むにつれぐいぐい引きこまれました。ありのままの自分と対
峙しようとする、また周囲にありのままの自分をわかってもらいたいと願う、
若者たちの物語だったのでした(おまけに、この物語は実話で、登場人物と
わたしはほぼ同い年……自分が高校生だった頃、沖縄では登場人物たちが同
じように悩みを抱えていた、というわけです)。「障害を持って生きる」と
いうことが美化されることもなく描かれてました。
『またもや! 休むに似たり』はわたしにとっては大変イタイ作品でありま
した。あの主人公の弟君の言ったこと、わたしは実生活でもっとイタイ相手
から言われたことがある。だからってどうしろって言うんでしょうかね。自
分じゃどうにもならん。かと言って「ええねん、もう、なんでも」って突き
抜けられないんですよね。その辺りのイタさを思い出させてくれて、どうも
ありがとう(笑)。自転車キンクリートSTOREの作品としては、年末上演された
『OUT』のほうが、こう、芝居としては、スペクタクルではありましたが、本
作品のほうが後に引いたので、こっちを。
この下半期は他にもよかった作品がいっぱいありました。串田・緒方ゴドー、
桃園会『世界に一家』、199Q太陽族『街踏劇 ぼちぼちいこか』、羊団『水い
らずの星』、tpt『薔薇の花束の秘密』、カクスコ『借りたら返す!』、それ
から、第80回文楽公演での『心中天網島』など、心に浮かびます(どっちか
といえば、ヘビーなのが好きなんだなぁ>自分)。少し不満を言えば、日々
フツーに働いて生きている女の感覚が出ている作品が少なかったように思い
ました。それが出ていたのは、わたしが観た中では三角フラスコの『ホテル
ニューカレドニア』だけにじゃなかったかなぁ。三角フラスコの12月のAI
HALLでの公演は見逃してしまって、それが心残り。
役者部門
1位 | 市川猿之助 |
2位 | 内田淳子 |
3位 | 江口恵美 |
9月に松竹座で上演された通し狂言『義経千本桜』(九月大歌舞伎)はほんと
うによかった。昼公演・夜公演連続して観たのですが、大河ドラマにどっぷ
り浸れました。1日中出ずっぱりの猿之助さんが最後に源九郎狐になってお
なじみ宙乗りで彼方へ去って行ったとき、素直に「これを見せてくれてあり
がとう!」という気持ちになれました。
そして『月の岬』の再演と『水いらずの星』でわたしの目の前に姿を現して
くれた内田淳子さん。『月の岬』でのにじみでる内面もよかったですが、
『水いらずの星』でのキレかたには、ものすごいエネルギーを感じました。
『世界に一家』での江口恵美さん。開演直後から始まる、あの長いひとりゼ
リフ、置かれた状況のつらさが、痛いほど伝わってきて、尾を引きました。
腹にずーんと来たというか。『ドリームス』での高ピー女も、よかったです。