あれの上半期ベストアクト



1位 鴻上尚史作・演出、KOKAMI@network vol. 2
『プロパガンダ・デイドリーム』

 MONO『錦鯉』のあとにたまたま観たのだけれど……(で、『錦鯉』も、とても、
よかったのですよ)、「80年代演劇の逆襲」って感じがした。けなしてるんじゃないで
す。「すっげー」に、「やっぱり」がつくっていうか。一方で、主題はとても今的なの
に、どこかなつかしっていうか。学校で習う「歴史」は、うそじゃないけど、ほんとじ
ゃないって知ったのは、高橋和巳の小説を通してでしたが、報道も、うそじゃないけど
、ほんとじゃない。「教育に新聞を」運動で、こどもに一番教えなくちゃいけないのは
これなのよ、これ。


2位 深津篤史作・演出、アイホール演劇ファクトリー第3期生《収穫》公演
『春の音、曇天。をつけてみる』


いや〜、最後の、ユーミンの、「は、る、よ〜」という歌声が聞こえてきたときに、
やられたぁ、と。時間が経って、なおあの「経験」と、あるいは死んでいった友人と、
対峙しながら生きている自分が今ここにいる、っていうか。

3位 中谷まゆみ作・板垣恭一演出、サードステージ showcase シリーズ
『ビューティフル・サンディ』

 絶妙のキャスティング(小須田康人・長野里美・堺雅人)。できすぎ、といえるくら
いよかった。愛しているから、愛されているとわかっているから、身をひかなくちゃい
けないこともある、とかっこつけてみる。


役者部門

坂東玉三郎

いいものはやっぱりいい。これまで見た中で一番かわいい『藤娘』と、化けた『かさ
ね』でした。(南座、6月)

麻美れい

出てくるだけで舞台の色がごそっと変わる役者さんを、もうひとり、ってわけで。こ
の半年間では「ひょうご」の『二十世紀』と、tptの『Long after Love』の2本で麻美
さんを観ましたが、前者での演技もすばらしかったものの、後者での麻美さんのほうが
わたしとしてはお気に入りでした。六条御息所が麻美れいだったら、葵上に命は、そり
ゃ、ないでしょ(^^;。

江口恵美

わたしってば、「あの作品での江口さんは特によかったなぁ」って思うときは、いつ
も怖い役のときのような気がする。『どこかの通りを突っ走って』での江口さんも、よ
かったですけれど、『仮説「I」を棄却するマリコ』での、自分の頭の上にレンガが落
ちてきそうな感覚には、代えがたい。

次点 ロズギル(古田新太と生瀬勝久)


舞台では2人の掛け合いが起こっているだけなのに、近鉄劇場の上のほうから観てい
ても、こんなに楽しめるってのは、すごいことだなぁ、と。どちらかが、違っていても
、この味は出せなかっただろうなぁ、と。