12月

ごめんなさい、11月分をパスしちゃって。11月になったのを気 づかず、自宅のカレンダーをめくったのも1週間経ってから。スケ ジュールは普通にこなしてたんだけど「えっ、もう11月」。自分 でもあきれた、ボケかあっ!? 気を取り直して、12月。

エビス堂は大阪、神戸でバージョン違いを連続公演。脚本が締め切りまでに書き
上がるのか、という根本的な疑問は残しつつ(初日は避けた方が無難?)、役者の
熱気に期待。

あぐりーの再演は、初演とがらっと違ってることに定評あり。キャストや会場の
違いも楽しみ、初演より練られたいい仕上がりを予感。

桃園会と太陽族って良きライバルですが、公演時期も似ちゃうんで すかね。太陽族とアイホールは相性がいい。座付きの美術が劇場の 高さに映える。このところ劇団員の移動がどちらも多いので、今後 を占う意味でも重要。桃園会は再演、脚本的には再演に手を加えな い深津だが、出演者や会場、演出が違うだけでスリリング。伊藤え ん魔プロデュース「超能力やくざ」も懐かしの再演だが、キャスト 一新に期待、劇団公演じゃなくプロデュースを打つ意気込みにも。

12月はやはりバタバタしてるんで、今のところ予定に入らないが 都合つけば観たいもの一覧。 上舞「EROS」、WI'RE、クラシック・ルネサンスのPM/飛ぶ教室、 LOVE THE WORLD、まだ観たことないTAKE IT EASY、銀幕遊學◎レプリカント、そして先日逝去された遠藤寿美子プロデューサーの遺言 ともいえるサラ・ケイン。

宝塚は新感線でおなじみ野波浩の写真をチラシに使ったヴァンパイ アもの。「エリザベート」「モーツァルト!」で翻案に異彩を放っ た小池修一郎のオリジナルでトップ紫吹淳の退団公演を飾る。宙組 公演「白昼の稲妻」でも川崎悦子の振付が全面的にフィーチャーさ れ、ますます新感線に似る宝塚に期待十分。ドラマシティ公演はフ ランス革命直後の王朝裏話か。華やかなコスチュームプレイは星組 お得意、出演者半数でボリューム感なくとも大劇場より近い舞台は お徳。普通のお芝居ファンなら豪華な衣装に(これでも!)目を見張 るだろう。

年末の大トリ、アラカルトはオススメ。これ観なきゃウチは年が明 けない。NHK紅白と同じく恒例イベントと化しているが、サービ スのワインで酔った頭で行く年をしみじみ思う。近鉄劇場も閉鎖さ る来年、このMIDシアターを始め新たな劇場で次の演劇にまた出 会うことでしょう。

10月

天候不順の夏の後、めっきり秋めいて実り多く食欲もます今日この頃、演劇ライ
ンナップも充実の今月。いきなり大好きなデス電。ヘップは初めて、おシャレな
空間に合わねえけど、赤い観覧車のド肝抜いて、ぐるんぐるん目を回しちまおう
ぜっ。タイトルが「鯖」なのに日程表が「鮒」になってるセンスが、とってもデ
ス電っぽくていい。

エビス堂は大阪、神戸でバージョン違いを連続公演。脚本が締め切りまでに書き
上がるのか、という根本的な疑問は残しつつ(初日は避けた方が無難?)、役者の
熱気に期待。

あぐりーの再演は、初演とがらっと違ってることに定評あり。キャストや会場の
違いも楽しみ、初演より練られたいい仕上がりを予感。

先日初心者へのおススメ劇団はどこって話になって、まずスクエアあたりからっ
て結論になったのだけど、初心者にも芝居通?にも好評です、スクエア。のほほ
んとして癒されるけど、わずかに苦くて。今回は客演含め男ばかりで、カクスコ
のノスタルジーではなく、笑いの中にも現代の閉塞感がちらり。

犯友も維新派と並び大阪を代表する野外劇の旗手。アート寄りの維新派に比べ、
めっぽうわかりやすい庶民派大衆演劇。こちらも、めくるめく野外劇のスペクタ
クタクルじゃあ負けてはいない。テントの醍醐味は、もはや恒例秋の行事。

ミュージカル「エリザペート」の翻案が原作者をも感嘆せしめ、海外にも名を馳
せた宝塚の小池が、今度はシェイクスピアのロミジュリに挑む。蜷川に続く名前
で客を呼べる演出家の本領発揮か。

プロデューサーの名前で客を呼べるのが、メジャーリーグ主宰の笹部博司。モン
テ・クリスト伯のキャスティングにはたまげる。攻撃的しかも内省的な魅力を爆
発させて一世を風靡したシンガーソングライター橘いずみ(大好き!)を起用する
なんて。イチバン観たいのは、たぶんプロデューサー本人でしょう。そのカンを
信じてついて行くっ。

ひょっとしたら今月イチバンうれしいのはニュートラルの復活。ったってニュー
トラルは劇団名じゃなく作演出のユニット名で毎回キャストは違うのだけど、静
謐で良心的な作品は大好きだった。悲しい話でも終演後に心が暖ったかくなる。
お帰りなさい、ぱちぱちぱち(拍手)。

9月

かつて新感線が「仮名絵本西遊記」巻之1と2を連続公演した際、シャレで商業
演劇の日と称しお弁当付きのセット券を販売したっけ。91年9月は万博ホール
での公演で、たしか台風が来て大変だったような。今や東京は新橋演舞場、大阪
は松竹座でそれぞれ1ケ月公演を打つまでに動員を伸ばし、押しも押されもせぬ
商業演劇の看板を背負う。規模が大きくなれど小劇場魂に変わりないところに、
かつてサブカルだったビートルズが世界標準になるまでの進化と重なる。それっ
て思い入れが過ぎる!?

第2週末は充実。糾もあうん堂も見逃せないが、おススメはユリイカ。レトロで
おかしくてもの悲しくって。ART COMPLEX1928の空間に似合うことは電遊以上か
もしれない。

第3週末は、観劇ちょっとお休み。内田淳子の出る焚き火の事務所や立身出世劇
場、野外演劇フェスティバルの浪花グランドロマンなど気になるけど。大阪を離
れ、維新派や無名塾を観ているかもしれない私?

第4週末も作品目白押しで、スケジュール調整大変。ジャブジャブと少年王者館
王者館が大阪でブツかるのがおもしろい。ジャブジャブの岩木淳子がライバル?
の王者館に客演(深津プロデュースやナビにも客演の売れっ子ぶり)。王者館はO
MS亡き後、初めての倶楽。チラシ見ると、かつておなじみの出演者名がずらず
らと協力者欄に並ぶ。えっ、役者を引退しちゃうの!? ファンだったあの顔が見
れない寂しさは、劇場が違う違和感を上回る。でも、また大阪に帰って来てくれ
てありがとう、王者館そしてジャブジャブ。

オリガト・プラスティコ出演の長塚圭史は、演出していた「ウィー・トーマス」
大阪千秋楽(9/3)のカーテンコールで客席から飛び出して拍手受ける。オリガ
トの東京初日目前(9/12)で忙しいのに、この余裕はどうよ。

8月

来年閉館する近鉄劇場が公演ラッシュ。先々月から今月にかけ公演
あった阿佐ヶ谷スパイダース、ファントマ、MOP、花組芝居もカー
テンコールで、ちょっとしめっぽくお別れの挨拶。rise-1も梅田花
月復活に明渡すべく演劇用の劇場としてはわずか2年間の生涯を閉
じる。アンテナ劇場。の千秋楽で支配人のくやし涙に思わずもらい
泣きしたのが、あの勝気な大木なつ美(芝居屋坂道ストア)。まだO
MS閉館のトラウマ癒えないというに、こちらまで哀しいの伝染し
ちゃうじゃない。

で、ラストランを飾るべくガンばってる近鉄劇場。超売れっ子・ク
ドカン率いるウーマンリブが目玉でしょうが、観たことないんで何
とも言えん。扉座はかつて勘九郎に提供したホンを劇団で上演、こ
れ期待っす!! 「奇人たちの晩餐会」は01年10月に同じ近鉄劇場で
「おばかさんの夕食会」として上演あり。この時の出演は陣内孝則
と辻萬長。その主宰・シアター21はサスペンスフルな翻訳劇。シア
ター21とひょうご舞台芸術は、海外の新しい脚本を持って来るのが
早いし良心的だと思うけどいつも客足伸びない。地味なのかなあ、
おススメなんだけど。ヨ企画はタイトルからイケてる。前作は9面
の部屋、その同一時間をマルチ展開するシチュエーションコメディ
だったが、進化を一時停止、再演で原点に戻るつもり!?

月末に関西の大御所2劇団。新作はこれでしばらくお預けのMONOと
工藤俊作と金田典子抜けた太陽族の再演作。夏休みらしく、びわ湖
ホールでダンスフェスもいい。暑いからムズカシイこと考えるより
カラダ動かし汗かくべしってね。「阿国」も上々颱風で踊れそう。

7月

四季がディズニー版「アイーダ」を大阪から初演と発表、今年夏から秋
へと「アイーダ」ブームが続く。既にフェスティバルホールで2つのア
イーダ海外公演が発売中だが、宝塚もオリジナルの脚本と音楽で参入、
これが湖月わたるの大劇場トップお披露目となる。演出・木村信二はオ
ペラ路線をひた走り「ばらの騎士」「トゥーランドット」を続けて歌劇
化するが、今回は満を持しての大作1本もの。300人を動員するオペ
ラに負けないスペクタクルを期待。

宝塚大劇場の出演者は70人ほどだが、客数でそれを下回る(キャパ50
〜60人)の公演もおもしろい。内田淳子みずから企画の「エリコ2」、
衛星の実験的演劇「コクピット」。極小のスペースでライブの醍醐味が
味わえる。「風のピンチヒッター」2本立もある意味冒険、あれだけ走
り回るダッシュで体力が持つのか。演出は新作じゃないからラクでしょ
うが。そういや、大塚さんの新作観たのいつだったっけ。

ピーエムはなじみのOMSを離れて久々のホール公演。空気を大事にす
るだけに客席との距離がやや心配。MOPは再演、正直言ってこの初演
は好かん。60〜70年の反権力闘争の時代を懐古して甘すぎる。それ
はマキノノゾミが告白するように世代の違いなのだが。その意味で梁山
泊が、唐の旧作をどれだけ現代に通じるものに甦らせるか注目。清流は
いい作品だけに集客伸び悩みが惜しい。底ににじむ静かな怒りにとても
共感できるんだけど。

エンタメ系。rise-1も短い命、これが小劇場の最終公演となるアンテナ
劇場。お別れだからじゃなくこの女優陣なら観なきゃ。ファントマも相
変わらずチラシ裏の細かいネタ好評(本番よりおもしろいってどうよ)。
売込隊は劇団員のテンション絶好調(梅本真理恵はアンテナと両方出る
の? ホント!?)。ゴーハリ完売、追加公演はキャスト人気? 私として
は主宰・川下大洋がまかせた演出・上田一軒(スクエア)のほんわかさを
楽しみにしてんだけど。

6月

rise-1シアターも小劇場から元の花月へと再変身、OMSをなくし
た梅田からまたひとつコヤが減り、残るはドラマシティ、HEP、
カラビンカだけ。四季専用劇場が入る西梅田の新ビルは姿を表わし
つつあるが、栄枯盛衰は世の流れ、かつて宝塚とレビューを二分し
たOSKもついに解散、どこか淋しい気分は止まらない。が、アゲ
インストの風にめげず関西の劇団は元気。万歳、ヨーロッパ、桃園
会、GISELLE、アグリー、八時半が競う。

万歳=継続は力なり、演劇もだが劇団を維持する粘りが身上。ヨー
ロッパ=三谷幸喜を抜いたと吹聴しまくっている私だが、もちろん
本音。観ても役に立たない芝居とうそぶくあたりにメジャーシーン
での大バケを予感。桃園会=尽きない作家の才能とますます深い役
者陣。GISELLE=今回は役者顔合わせの妙に尽きる。このバラエティ
は何よ。アグリー=ここにも底知れぬ才能。勢いというかスピード
も魅力。ジェットコースター展開のせつなさ。八時半=作者や劇団
員が変われども変わらない世界。深い哀しみをたたえた湖に立つ笑
いのさざなみ。

自称「細かい芝居」のジャブジャブ。この旅役者集団は、芝居の中
で宮本武蔵も真っ青の間合いをみせる(ふだんフツーの人たちなの
に)。ここにも才能のヒト=長塚率いる阿佐スパ。役者としてもバツ
グンにいいカンなのを「奇跡の人」で再確認。ケラは元々ミュージ
シャンだから、まったく新しいミュージカルを創ってくれるはず。
チックはキャスティングでいってコンサート気分ってことすよね、
OK!! 宝塚バウ、萩尾望都の原作は懐かしいセピア色。ケラの
「SLAPSTICKS」をパクった小柳菜穂子先生だが、コミックはどうア
レンジ? ギエムはやわらかな身体とテクではサイコー。G2、4
色のチラシを集めると1枚のポスターになる仕掛け。チラシ1枚で
はハミ出すキャスティングがすごい。

5月

ミュージカルが多いっす、今月。四季が2つに宝塚とOSK、オケピと
新感線もミュージカルだあっ!? OSKが近鉄バックアップ下での解散
公演。バリバリのダンスは宝塚より上、娘役がブリっ子でなく元気いっ
ぱい現代っ子なのがお気に入りなのに残念。得意のショーオンリーで飾
るサヨナラは涙なしで観られない。対する宝塚は、菊田一夫演劇賞受賞
の専科・轟悠をトート役も好評なトップ・春野寿美礼にブツけて、事実
上2トップ体制を組む。娘役トップのふづき美世の大劇場お披露目でも
あり谷正純センセも力が入ろうというもの。骨太な隆慶一郎(中島かずき
もファンだとか)原作を宝塚流にどう料理する?

オケピの欠点は会場のフェスが広過ぎること。和製ミュージカル最大の
欠点である楽曲の弱さがまだ解消されていないこと。ロイド=ウェバー
やクンツェ+リーヴァイのような天才にめぐまれないのは仕方ない。つ
まり現状の日本で最大限良く出来たミュージカル。新感線に不満はいっ
さいなし。「レディ・ゾロ」に客演のカナコ、中谷さとみ、河野、メタ
ルのうまさにあらためて舌を巻く。新感線でワキ役に甘んじている彼ら
だが主役を張れる実力を持つ。これだけの厚みに支えられて、エンタメ
の王道を行く新感線がある。

スポンサーが降り、解散の危機下にあるOSK。いっぽう小劇場で解散
が決定したのが「寿歌」で一世風靡したPナビ。看板の佳梯かこも先に
退団、主宰の北村想は小説家に専念するとか。劇団主宰が作家としての
執筆以上に、劇団維持に努力を要する現実が推しはかられる。その北村
が塾長を務める想流私塾の卒業公演。玉石混交の作家の中から未来をに
なう才能を発見し、先行投資する楽しみが得られよう。アイホールでは
他にも高校生と一緒に角ひろみが作り上げる新作に注目。角独特のせつ
ない言葉と若い力のアンサンブルが化学反応を起し、青春(古いっ)が大
爆発するかも。

スクエアはOMSさよならイベントで、奈須崇作のショートコントを披
露。いつもの森澤作品と変わらず、他の公演に出演中の北村守を欠いて
もいたが、スクエアはスクエアだと少し安心した。リラックスできるシ
チュエーション・コメディは、笑いよりむしろほのぼのしたなごみで安
らげる。ト社も、今お気に入り。スピーディな展開、ぜいたくな照明音
響、活きのいい役者(ちょっと歳取ってるけど)揃っててブレイク寸前。

野田秀樹と弟分の松村武が近鉄劇場の上下で公演(日がびみょーに違うの
が惜しい。同一日だったら本番中にお遊びがあったかも)。カムカムとし
ては故郷へ錦を飾る公演でもあるので張り切らざるを得ないはず。

4月

再演が多いですな、コンボイや奇跡、キャラメル。つかは再演という
より復活、かな。蜷川ペリクリーズもシェイクスピアの本場で評判は
どうだったのかしらん。「エリザベート」以来の内野聖陽(と井上芳
雄の)人気沸騰は止まるところ知らず、ってところ。奇跡の鈴木杏の
評判良いのは東京から伝わってます、大阪も期待大。これまで中嶋朋
子、寺島しのぶ、管野美穂らアニー役の女優は、これをステップにみ
な大成した実績ありだもん、またも記録更新か。色々な劇団で取り上
げられた名作「ヴァニティーズ」を女装集団が色物仕立てに、いいや
マジ芝居かも、ちょっと恐い!?

先月はグローブ座+tpt企画の「トイヤー」の完成度に驚いたけど、
トニセンを起用しての集客の多さ、演劇ファン以外への浸透も事件だ
と思った。海外のいい作品を、いち早く提供するひょうご舞台芸術も
マジメにアピールするだけでなく、キャスティングに驚かす仕掛けや
ハッタリが必要だとつくづく思う。良質の作品をするだけでは、どう
しても集客少ないもの。木場勝己と大沢健がうまいのはわかるけど、
渋過ぎる。でも、内容いいんだろな、みんな観てね。

今月最大のおススメは、またも京都でロングラン公演に挑む電遊と、
大阪の野外劇を活性化せんとラフレシア演劇祭を企画したくじら。傾
向はまったく異なれど、この2つが関西の今月の芝居を代表する予感がひしひし。

3月

いよいよOMSの閉館も秒読み。3月は卒業式のシーズンでもあり、別れ
と再出発は世の習いかも。せつなさの中に賑やかさを忘れず、感謝を込め
てラストランを見届けたい。最後の演劇公演となる「さらバイ」、そして
3日間に渡り繰り広げられるクロージングイベントは必ずや語り草になる
だろう。

劇場経営の大変さは一緒だろうに、WFは10周年記念の健闘が続く。流
星倶楽部には何とオーナー福本氏も出演するらしい。女性作家優位の関西
だが、大正まろんの繊細な心理描写には、癒しの効果がある。女性作家の
いっぽうの旗手、南船北馬一団の棚瀬美幸は、たとえればよくしなる強靭
な葦、知性と感性が溶け合う言葉で魂を貫く。台頭する女性作家を迎え撃
つ御大・太陽族の岩崎正裕。「私たちの望むものは」とは何ともストレー
トなタイトル。ダミ声なのに高音は妙に透き通る岡林信康の歌声を思い出
す。その岩崎がケレンな演出で魅せた近松(01年、女殺油地獄を元にし
た「ハードタイムス」)に今年は深津篤史が挑戦する。エロスと死を恐怖
にからめれば右に出る者ない深津だが、最近は温かみと深みが備わる。桃
園会劇団員以外に多彩な出演者を得て、近松の世界を現代に繋げる。

HEP HALLは、立身と猫尻。実は作家・関秀人の人情ものがけっこう好き。
ほわっとした家族的な劇団の体質にも合う。今どき珍しい、懐かしの家庭
の味を浪花の街にぜひ残したいもの。猫尻は昔からベストワンよりオン
リーワン。唯一絶対の存在として少女の輝きを失わない。東大寺三月堂の
お水取りではなく、猫尻のDMチラシから関西の春は始まるのダ!! エン
タメの王道を驀進中のエビス。今回、チラシでフィーチャーされたのは何
と猪平浩美、いよいよ主役かあっ。正統派美人じゃがキレるとヘンにイイ
(ホメてる)。むろん2番手・浅田百合子もそーだが、キャラはカブらず。
とにかく今は演技陣大充実なんで、作演の張り切りようが目に浮かぶ。

「海と日傘」日韓プロジェクト、日本語と韓国語で交互上演して交流を深
めるという企画はいい、出演者や脚本もむろん文句つけようない。が、心
配は日本語版演出の三浦基。松本雄吉が関わらない維新派も不安。役者が
見たいから2つとも当然行くが。

KAVCも好企画がそろう。みかんがむを始めとする4劇団のコンピレー
ション、鈴江俊郎と西田シャトナーがそれぞれオーディションメンバーを
鍛えての2本立、MONOと太陽族の中間のような味わい・水の会「じゃ
んぐる」など。でも、時間なくて行けそうにない、ごめん。宝塚は大鳥れ
いに代わる花組の新トップ娘役・ふづき美世がドラマシティでお披露目。
「エリザベート」東京公演で体調を崩した大鳥の代役を一時勤めた遠野あ
すかの可憐さも捨てがたい。

2月

観劇本数少なめの今月なれど中身は濃い。イチオシ、デス電所は劇団久々
のWF、あの緊密な空間でヤラかしてくれることでしょう。音圧で難聴に
なるやら劇場よりデカいプロジェクターが入るなど根も葉もないウワサが
飛び交うのもデス電らしい(勝手に私が言ってるだけですが)。凝ったチラ
シでデス電と甲乙つけがたい売込隊ビーム。メガネのレンズ部分の穴開け
具合が絶品。無料パンフの完成度ともどもいつも感心させられます。チラ
シが良くない劇団は芝居もおもしろくないは絶対の真理。いいお芝居はチ
ラシも必ずいい。たまに、チラシだけ良くって芝居はたいしたことないっ
てのにも出くわすが、手抜きチラシでおもしろかった試しはない。

で、これまたCG処理でいかにもポップなチラシの世界一団。トリックス
ターの連作は個人的に大好き、劇団を代表するおススメ作。短編3作を2
本づつ上演する変則スタイルなので、3本とも観るには2回会場に足を運
ぶことになる。そうすると1作を2度観ることになるが、裁判劇のトリッ
ク知りつつ倒叙で観るも一興。ハズむ会話、役者の生きの良さを純粋に楽
しめる。OMS戯曲賞受賞の「滝の茶屋のおじちゃん」。ハッキリ言って
OMSプロデュースの北村想演出にはストレスいっぱい。あくまで憶測だ
が作者としても落とし前をつけたいところだったのでは。エレベーターで
大量の砂をウイングフィールドに運び込んだ伝説は、OMSに舞子海岸が
再現されて甦る。クラシック・ルネッサンスのトリを勤めるアグリー。樋
口・池田の2人3脚が持味だが、とうぜん今回は池田演出への期待が大き
い。古典にふるわれる「繊細な力ワザ」が新機軸をもたらす。

またかの陰陽師だが、舞台化はOSKの「闇の貴公子」初演がけっこう早
かった。新感線テイストの演出、得意のダンスは宝塚よりパワフル、娘役
も現代っ子らしく、元気はつらつ。歴史ロマンをスピーディに展開して華
麗。もうすぐ解散のOSKだが、おセンチではなく「新・闇の貴公子」も
絶対のおススメ。かつて今回と同じベンガル、綾田俊樹、藤山直美の顔合
わせを(今はなき)アート館で観た時は本当に抱腹絶倒した。芝居そっちの
けで(実は台詞を忘れていたりして)延々と続くアドリブ合戦。聞くところ
では、日によって上演時間が30分以上も違っていたとか。何が起こるか
わからない3人の「雨上がりの夜空に」は必見だろう。

初見の人には評判いいらしい「人間風車」。遊気舎の初演とG2版はまっ
たく違うものとして観るべし。「こどもの一生」が公演ごとに恐怖感薄れ
たことといい、スタイリッシュでビジュアル得意なG2とホラーは合わな
いのでは。同じくパルコプロデュースの「スラップスティックス」。「フ
ローズンビーチ」の再演でケラの才能にあらためて驚く。中劇場キャパで
もおもしろさ半減しないことを信じます。

1月

久々に新感線がカムバック大阪。「スサノオ」もほとんど新感線だっ
たが、R・U・Pやホリプロや松竹とのタイアップなしの劇団本公演は久し
ぶり。しかも古田、じゅん、聖子がそろい踏み、劇団員もフルライン
ナップ。既に東京公演をご覧の方もいるし、戯曲も販売中なので内容
は紹介するまでもないっしょ。青山円形劇場の子供向けミュージカル
「リトルセブンの冒険」を中華アクションテイストでリメイクしたも
のだが、同作も未見。とんと予備知識なし、出遅れてる私、それも楽
しいかなと。

演劇弁当になってから初めて来阪の猫ニャー、大阪初上陸の猫ホテ。
シュールな世界が渦巻きそうな予感。2匹の猫を関西のシュール、シ
チュエーションを代表する売込隊ビームとヨーロッパ企画がタッグ組
んで迎え撃つ。rise-1演劇祭で、めでたく大賞受賞のヨーロッパ企画
が今年どこまでブレイクするのか、その試金石。

OMSクロージングイベントは、ビル内に劇団稽古場もあった新感線
と南河内万歳一座がトリを飾るが、戯曲賞を連続受賞した樋口美友喜
の所属するUgly ducklingが、PM/飛ぶ教室と並び公演する。ベテラン
勢に伍すだけの期待が、若い彼女らに期待されている。樋口の脚本か
らあふれ出す言葉とイメージを、池田祐佳理の演出が力強くしかもキ
メ細かに視覚化。女優は芯の座った美人ぞろい、男優がやさしげなの
も今どき(同じく女優が多い南船北馬一団にも共通の匂い)。

深津篤史プロデュースは、00年の春にアイホール演劇ファクトリー
の卒業公演として作・演出されたオリジナルを再演。想流私塾の師範
としてもアイホールに関わった深津と卒業生たちの再会の場となる(そ
のまま桃園会の劇団員になった者も)。初演より深い世界が期待できる
はず(実は初演を未見。Ugly duckling「さポろペ」も3演目だが初演
再演とも未見、不勉強すまん)。

「初演観てません」告白大会が続く。「月光のつヽしみ」岩松了のホ
ンは好き嫌い別れるけど、ハマるとヤメられないシュールさ。納豆と
か鮒寿司とかキツめのチーズ、そういう後を引く発酵食品の匂いが岩
松と竹中直人に漂う。巨漢・えん魔が繰り出すファントマのこてこて
ギャグも、それに近い。

お正月気分ったら、やっぱ歌舞伎でしょ。某さんみたく着物で観劇な
んて粋じゃなく、こっちはユニクロとGAPだけど。いちおう、魁春
襲名披露がメインなんだけど、鴈治郎の方が目立ってる気がするのは
私だけ? ライフワークの「曽根崎心中」お初の完成度ったらないも
の。「二人夕霧」で華があるのは果たしてどっち。

ミュージカルのチケ売れてないようで、ゴースト、風共とも苦戦。去
年秋の「エリザベート」「モーツァルト!」の賑わいが夢のよう。た
ぶん楽曲がヒットの決めてなんだろう。両作のクンツェ+リーヴァ
イ、もうすぐ関西での千秋楽を迎える四季の「オペラ座の怪人」
「キャッツ」のロイド=ウェバーの魅力的な旋律ったらない。観劇後
も頭ん中でぐるぐるメロディが踊り出して一昼夜は鳴り響く。ひきつ
けてやまない音楽の呪術、魔力が和製ミュージカルには欠ける。作曲
の難しさを回避して既成のアバの楽曲を使った「マンマ・ミーア!」
は作戦勝ちってところか。なんとも長ったらしいタイトル「ジャッ
ク・ブレルは今日もパリに生きて歌っている」も、その意味で安心し
て観られそう。宝塚の現役生徒では、ピカイチ歌唱力の初風緑と、四
季退団後、久々に関西登場の堀内敬子が楽しみ。宝塚退団組の西條三
恵は「Shoes On!4」に出る。ダンスも芝居(可愛い系なのにコメディも
得意)も出来る娘役だっただけに、これからもがんばって欲しいもの。
その宝塚で振付もこなす平沢智が、一キャストというぜいたくなタッ
プショーを満喫しよう。

これまた元宝塚・星奈優里が「シェルブールの雨傘」に登場。グロー
ブ座をジャニーズが運営することで、トニセン3人をバラ売りして主
役に据え連続公演するシリーズ第一作。坂本昌行と藤谷美紀を軸に、
演出は大御所・山田和也、振付は売れっ子・上島雪夫を起用して力が
入る。宝塚はフェアリー系の朝海ひかるの大劇場トップお披露目。早
くから将来トップ間違いなしの太鼓判が押されていた春野寿美礼は別
として、同期で二番目のトップ就任(押しも押されもせぬ娘役トップの
花總まりはこれまた別にしても)は早い。特に技量がすぐれていたわけ
でもない彼女だが器量良し、舞台映えする華にめぐまれ、人をひきつ
ける。コンビを組む舞風りらはキレるダンサー、耳が大きいと誤解し
ていたが、先日間近に見たら顔の小さいこと! 耳は普通の大きさな
のだが、顔が小っちゃ過ぎたのだ!! 肝心の披露目作、植田理事長作
品はともかくとして、藤井クンは今、宝塚で最もビビッドなショーを
作れる人。大劇場と平行してバウホールでは若手を主役に起用、演出
も若手で、3作品を5組で連作競演する試み。元がこれまた植田作品
「おーい春風さん」「春ふたたび」「恋天狗」とタイトルもお子様
チックなのはブーイングだが、そもそも「ドンブラコ」で旗揚げした
宝塚歌劇らしいと言えなくもない。

野村万作、萬斎親子の狂言。萬斎は蜷川「オイディプス王」に出演し
たり世田谷パブリックシアター芸術監督に就任したりで今が旬の活躍
ぶり。狂言はよく知らないが、和泉元彌はあたら才能を発揮する場を
狭めて惜しい(羽野晶紀のダンナなので応援したいのだけど)。

芸術創造館では、クラシック・ルネッサンスが継続して行われる。先
行の遊劇体、WI'REとも戯曲と真剣に取り組んで好感が持てる。が、戯
曲本来の好き嫌いで、舞台の印象が左右される。個人的には、作家が
嫌いだとどうしても受容れられない部分があった。それは、演出や
キャストの力ではどうにもできないと確認できたのも収穫か